1073●フロンティアサイエンス分野向けた150 GHz帯無線光変調素子の試作と評価を行った。高周波電磁波の照射による直接光変調の効率向上を目指し、従来の平面アンテナ構造よりも大きな電場増強効果が得られる上下配置アンテナ構造とEOポリマー導波路を用いた新規構造のデバイスを試作した(図3)。試作したデバイスに150 GHz電磁波を照射した結果、150 GHz電磁波による従来比10倍以上の高効率直接光変調を実証した。本デバイス構造は、EOポリマーの転写法を用いて作製しており、デバイスの量産化への展開が期待できる。総務省「令和3年度から新たに実施する電波資源拡大のための研究開発」『無線・光相互変換による超高周波数帯大容量通信技術に関する研究開発(光電気相互変換技術)』に共同採択された(徳島大、NICT、岐阜大(令和3年度~))。電磁波制御デバイスの量産化や広帯域化・高効率化に向けて、ウエハサイズでのEOポリマー膜の汎用的な転写技術や自立膜・積層膜を作製する技術を世界で初めて開発した。具体的には、これまで開発を進めてきたEOポリマーの転写技術を発展させることで、3インチウエハ基板上にEOポリマー膜を転写することに成功した(図4)。ウエハサイズでのEOポリマーの転写技術は、電磁波制御デバイス等の量産化に向けた基盤技術となるものである。また、EOポリマーの転写技術を応用して、EOポリマーの自立膜・積層膜を作製する技術を新規に開発した。EOポリマーの自立膜・積層膜作製を行うために、化学関連企業と共同で開発を行った、ガラス転移温度が189℃の耐熱性及び靭じん性せいの高いポリカーボネート系のEOポリマーを用いた。エッチング等のウェットプロセスを用いて、まず5 µm程度のEOポリマー自立膜を多数個作製した。その後、表面処理技術、真空熱圧着技術等を用いて、EOポリマー自立膜を、ポーリング方向をそろえて張り合わせることによって、EOポリマー積層膜の作製を行った(図4)。75 µm 程度の厚さの16層のEOポリマー積層膜の作製に成功し、今後、任意の膜厚のEOポリマー積層膜を作製していく上での技術基盤を開発した。EOポリマー積層膜を用いた広帯域・高感度電界検出デバイス開発に向けての基盤となる成果が得られた。EOポリマーを用いたデバイスの光耐性強化に向けて、光劣化の要因を明らかにするために、85℃における光劣化速度定数の光強度依存性を測定した。光劣化速度定数は、一重項酸素励起エネルギーよりも低いCバンドの光照射では光強度の二乗に比例するのに対して、一重項酸素励起エネルギーよりも高いOバンドの光照射では光強度に比例した。この結果は、光劣化が光励起一重項酸素の関与する光酸化であることを示しており、ガスバリア膜などでデバイスを封止し酸素の関与を遮断することにより、デバイスの光耐性を向上させることができることを示唆している。ガスバリア膜として酸化アルミ原子層堆積(ALD)膜によるデバイスレベルの封止技術を検討したところ、ポリカーボネートフィルム上に形成した膜厚48 nmのガスバリア膜により酸素透過度が約4桁減少し、光耐久性を大幅に改善可能であることを確認した。図2 光変調器の比較0.11101004006008001000120014001600VπL(Vcm)Wavelength (nm)LiNbO3EO Polymer本成果⾼効率・短波⻑0.52 Vcm図3 上下配置金アンテナを用いた150 GHz帯光変調器EOポリマー光導波路上下配置金アンテナ光変調信号グラウンド電極レーザー光7 mm・・・・・・150 GHz帯電磁波EE【上下配置型】【平面型(従来型)】EEシクロオレフィンポリマー(COP)UV硬化樹脂図4ウエハサイズでのEOポリマー膜の転写技術と自立膜・積層膜の作製技術EOポポリリママーー自自立立膜膜EOポポリリママーー積積層層膜膜((2層層))0.05~1mmのの任任意意のの膜膜厚厚ののEOポポリリママーー積積層層膜膜自自立立膜膜~5µm 16層層のの積積層層膜膜~75µm【【自自立立膜膜とと積積層層膜膜作作製製技技術術】】【【ウウエエハハササイイズズででののEOポポリリママーー膜膜のの汎汎用用的的なな転転写写技技術術】】3イインンチチ3.5.1 神戸フロンティア研究センター
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