1093●フロンティアサイエンス分野析システムの改良を行うことでプロトタイプシステムを構築した(図1右)。(2)入力に対する細胞の応答などの細胞現象の追跡を非染色で最小限の生体毒性で実現するための新しい技術として、電磁波研究所と共同でデジタルホログラフィー技術を応用した細胞内微細構造の屈折率差の定量計測を試みた。その結果、細胞内の屈折率差を定量的に画像化することに成功した(図2)。この成果はOSA Continuum誌に掲載された。このデータは補償光学計測システムの設計にも不可欠なものである。2.バイオマテリアルを活用した新奇情報素子の構築(1)バイオマテリアルを活用した新奇情報素子の構築に関し、これまで我々は、天然の生体分子の部品をうまく組み合わせることで、これまでにない新しい機能を発現する人工生体分子素子についての研究開発を行ってきた。令和3年度においては、DNAナノテクノロジーと人工分子素子を組み合わせた新奇情報処理システム構築のコンセプトの提案と、これによって実際に情報運搬分子の流れを制御するための基本要素である分子レベルの分別器・集積器の作製を行い、それらの性能を定量化して有効性を確認するに至った(図3)。この成果は、生体分子を用いて細胞が実際に行っている組合せ爆発を起こすような対象の省エネルギー・省リソースでの情報処理の実現を人工的に再現するためのベースとなるものとして注目を集めて、国際科学誌Scienceへの掲載に至っている。また、自律的に動作する人工分子構築に関する国際コンソーシアムを形成し、中心的な役割を担うに至っており、今後の研究の加速が期待される。(2)細胞内微小空間構築技術を用いての細胞の有用機能を人工的に再現するための基礎技術の検討に関し、人工ビーズ表面における細胞機能の発現系の設計を行い、必要な実験試料の調製及び細胞へのビーズ導入条件の検討を行った(図4上)。その結果、ビーズ表面に結合させた外来DNAから遺伝子発現を誘導するためには、DNAの塩基配列だけでなく、ビーズへの結合様式や、ビーズ侵入直後に起こる細胞内応答の理解と制御が必要であることが分かった。また、細胞内における分子認識過程を再構成するために、精製したタンパク質やRNAを用いた液-液相分離(LLPS)による分子認識の定量方法を検討しアッセイ系を構築した。以上に加え、細胞内における細胞機能の発現に関して、細胞内における染色体末端集合化と染色体機能との関係を明らかにした(図4下)。この成果はMicroorganisms誌に掲載された。図2 デジタルホログラフィー技術を応用した細胞内微細構造の屈折率差の定量図3 生体分子を組み合わせた情報処理システムの要素技術検討図4 細胞の有用機能を人工的に再現するための基礎技術の検討3.5.1 神戸フロンティア研究センター
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