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1153●フロンティアサイエンス分野高まったとしても解析されてしまうことがない暗号を目指して研究を進めている。また、ネットワークのつなぎ目である「ノード」に光の量子的性質を応用しようという研究も行っている。さらには、物理的な量子の性質を様々な計算機に活かし、高性能化を図るといった、より将来的な応用を見据えた研究も手掛けている。「グリーンICTデバイス研究室」では、名称の“グリーン”が示すように、環境負荷の少ないデバイスの研究を実施している。具体的には、高電圧に耐え、伝送損失が少なく、耐放射線性能も高いなどの特長を持つ、酸化ガリウムを素子に使ったデバイスの研究を行っている。酸化ガリウムは、物質の存在としては知られていたものの、それを使ったデバイスの開発はNICTが世界に先駆けて取り組み始めたテーマで、現在もグリーンICTデバイス研究室が世界のフロントランナーとして走り続けている。最後に、「超高周波ICT研究室」のテーマは、ミリ波やテラヘルツ波といった高い周波数領域の電波を情報通信に活用していこうというもので、そのためのデバイスやシステムの研究開発を実施している。テラヘルツの周波数は、従来の携帯電話や無線LANで使っている電波と、可視光や光通信に使われる光などとのちょうど中間にあり、そのため、従来の無線デバイスと光デバイスで使われる技術の両方を見つつ、それらを融合させたり、歩み寄ったりしながら研究を進めている。テラヘルツ帯には、未利用の周波数帯が広く空いており、Beyond 5Gや6Gでの活用も期待されている。当初からNICTの未来志向研究の拠点として設立された「神戸」に対し、小金井フロンティア研究センターが手掛けているテーマの中には比較的近い将来に社会実装が期待されるものもいくつか存在している。数年で世の中に出てしかるべき技術と、更に先を見据えて10年、20年、30年後に実用となる技術が混在しているのが当センターの特徴ともいえる。小金井フロンティア研究センターは、将来の情報通信にブレークスルーをもたらす重要な要素技術の研究開発を進めつつ、新しいICTを世界に先駆けて社会へ提案していく役割を果たすべく、活動を続けている。3.5.2 小金井フロンティア研究センター

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