51序説ターネット等にある知識(社会知)を取得し、それらの組み合わせや類推等で仮説を推論し、目的やポリシー等を持つ仮想人格を用いて対話等ができる「社会知コミュニケーション技術」、③実世界の様々な状況を随時把握し最適化された行動支援を行うことを目的とする「スマートデータ利活用基盤技術」等の研究開発を進め、以下の成果を得た。①チャンク(文より短い翻訳単位)を深層学習した分割モデルに従って翻訳するアルゴリズムを開発し、翻訳精度の劣化を補償する手法を提案した。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において、VoiceTraが活用され、都内の競技会場や選手村等にNICTの技術を利用している翻訳端末が約300台配備された。②高齢者介護支援用マルチモーダル音声対話システムMICSUSの完成度を高め、省リソース、高速化するとともにWebの情報を使いつつ、ユーザの好みに応じた雑談を可能にするなど新機能も実現した。また、自動並列化深層学習ミドルウェアRaNNCを高度化し、GPT-3を超える2,000億パラメータ規模の巨大なニューラルネットワークをそのアーキテクチャに依らず自動分割し、並列学習を容易にする世界で唯一のソフトウェアとした。③ローカルに収集されるプライベートデータの分布の偏り(場所や事象ごとの発生データ量)を考慮した連合学習方式を設計し、秘密分散学習等では扱うことが難しい複雑な深層学習モデルを対象に学習性能を改善できることを示した。また、時空間ラスター画像認識と周期的頻出パターンマイニングを組み合せた複合イベント予測手法(3DCNN-PFP)を開発し、異常気象等による混雑の時系列発生パターンの予測精度と処理速度を向上させた。さらに、これまでに開発した成果をxDataプラットフォームの情報資産として整理し、ASEAN IVOなどで利活用拡大に向けた活動を進めるとともに、環境モニタリング事業者と連携した自治体とのパイロット試験を実施した。 フロンティアサイエンス分野では、①将来の情報通信において求められる周波数限界の拡大や高速化、高感度特性の実現、処理能力の高度化等、通信・センシング技術の飛躍的な発展に資する「フロンティアICT基盤技術」、②高度な ICT システムへの活用を始めとする幅広い分野への産業応用を見据えた「先端ICTデバイス基盤技術」、③あらゆる計算機で解読不可能な安全性を実現する「量子情報通信基盤技術」、④人間の究極のコミュニケーションの実現や、人間の潜在能力の発揮を実現することで人々が幸せを実感できる新しい ICT の創出を目指す「脳情報通信技術」等の研究開発を進め、以下の成果を得た。①NbN/AlN/NbNエピタキシャル接合を用いた2次元磁束量子ビットを作製・評価し、従来比44倍の23 μsのコヒーレンス時間を確認するとともに、転写法を用いて上下配置型アンテナEOポリマー導波路THz検出器を試作し、150 GHz電磁波による従来比10倍以上の高効率直接光変調を実証した。②縦型Ga2O3 FET開発に必要となる、エッチング等プロセス要素技術の開発し、耐圧1,600 V超、オン抵抗 7.6 mΩcm2の世界最高レベルのデバイス特性を実現した。また、265 nm高強度深紫外LEDを用い、液体中及びエアロゾル中の新型コロナウイルスに対し0.5秒照射で99.999%以上の極めて高い不活性化効果を実証した。③秘密分散処理及び秘匿通信の高速化に取り組み、量子暗号ネットワークテストベッドに実装してゲノム・医療分野等における想定ユースケースで性能を検証し、QKD分散ストレージネットワークでの大容量(80 GB)ゲノム解析データの高速分散ストレージに成功した。また、イオンを二次元的に配列して光時計の安定度を向上させる新型イオントラップシステムの動作実証に成功した。④自然で多様な知覚・認知を司る脳内情報表現を包括的に扱う脳機能モデルの構築に向けて、より多様な知覚・認知条件下での脳活動データを収集し、脳機能モデルの構築と高度化を行ない、脳に倣う人工知能への応用を行うとともに、ヒトの脳領域間抑制機構が発達とともに成熟し、加齢に伴い劣化することをMRI計測により明らかにした。 Beyond5Gの推進では、B5Gを実現するための鍵を握る要素技術(超高速・大容量、超低遅延、超多数同時接続、自律性、拡張性、超安全・信頼性、超低消費電力等)の早期確立に資する成果の創出を目指し、①ネットワークからサービスまでの多様な参画者が集い産学官での研究開発を有機的に連携し加速させるB5Gのアーキテクチャに関する研究や標準化に関する取組、②民間企業等の研究開発を促進するための公募型研究開発プログラムに関する業務等を実施し、以下の成果を得た。①B5Gのアーキテクチャの重点課題として、地上系-非地上系通信システムを連携させる「ヘテロジニアスネットワークの統合」、フィジカル空間とサイバー空間を統合させるための「データの分散処理機1.2 組織及び業務
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