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122■概要人間の脳機能研究の知見を情報通信技術の革新的応用につなげることを目的として、平成23年(2011年)にスタートした脳情報通信融合研究センター(CiNet)は、令和3年に10周年を迎えた。CiNetは5つの原則からなる基本理念を謳うたっている。我が国及び世界のトップクラスの英知の結集を図り、産学官連携・協力を一層強化することによって最大限の成果を実現し、科学技術の発展、国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与し、人類の福祉の向上に貢献する『貢献原則』、グローバルかつ他分野の知見の融合による開かれた先端的融合研究の実現とその成果の公開と享受されることを目指す『オープン原則』、脳情報通信分野に関わる政府指針を認識し、他研究機関との適切な役割分担、効果的な連携の下に主体的な役割を果たす『統一原則』、生命の尊厳の重要性を常に認識する『尊厳原則』、研究実施を通して人材育成へ貢献する『育成原則』である。この理念の下、令和3年4月から始まったNICTの第5期中長期計画では、Society 5.0 で謳われているヒューマンセントリックなICT社会の実現に向けて、人間の脳機能の研究を更に加速している。特に、人間の認知、情動、知覚、意思決定、運動、社会性、言語などの高次脳機能について、多様な知覚・認知条件下における脳活動データを収集・分析することで脳内情報処理全体を包含するモデル『CiNet Brain』の構築を進めている(図1)。これは、脳に倣う人工知能への応用として高い評価を得ているほか、成果の応用も進んでおり、視聴覚刺激に対する脳活動から読み取った脳情報を用いて、ユーザーが製品やサービスに対して抱く印象・感覚の客観的評価を企業との連携の下で実施している。■主な記事令和3年4月に開始された第5期中・長期計画では、3つの計画目標を掲げた。『ア.人工脳モデル構築のための脳機能計測と解析に関する研究開発』では、認知科学や脳神経科学の基礎的かつ先端的研究を進め、社会行動における行動選択の葛藤のモデル化で、未解明であった行動選択と反応に至る回路を明らかにしたほか、社会脳に関わるビッグデータの収集システムの構築や行動選択における性差とその脳メカニズムを、定量データととも図1 CiNet Brainの概念図情動視聴覚認知抑制注意探索記憶連想計算整理学習時間知覚読解価値判断購買ゲーム対話想像創造的思考SNSナビゲーション(移動)倫理思考論理思考予測他者認知社会⾏動意思決定脳機能全体のモデル化(CiNet Brain)大規模脳活動データ(脳情報DB)運動能動・多課題モデル統合モデル常識社会実装計測技術開発解析理論・技術開発エキスパート脳評価暗黙知推定マーケティング学習・能⼒向上⽀援次世代コミュニケーション感性・情動評価ストレス評価社会⾏動予測匠の技の継承言語・翻訳BMI+ロボット技術ヒトと親和性のあるAIMEG7T-MRI3T-MRICiNet研究棟多種多様な⼊⼒情報(課題)が脳でどのように統合処理され脳がどのように理解し、感じ、どのように判断して、⾏動するかを再現できるモデル(⼈⼯脳)を構築する(ア)⼈⼯脳モデル構築のための脳機能計測と解析に関する研究開発全脳のモデル化︓CiNetBrain使えるところからすぐに実用化Non-linearmodel可搬型EEG((イイ))脳脳情情報報通通信信技技術術のの応応用用展展開開にに関関すするる研研究究開開発発((ウウ))脳脳情情報報通通信信技技術術のの社社会会的的受受容容性性向向上上とと産産学学官官連連携携研研究究活活動動のの推推進進受動・単課題モデル脳内情報処理の構成論的理解個性・常識・世界観・ひらめき⼈格の再構成脳情報通信融合研究センターの概要3.5.3脳情報通信融合研究センター研究センター長  柳田 敏雄

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