132■概要目覚ましい進化を遂げている移動体通信システムにおいて第5世代の次となるBeyond 5Gでは、単に情報インフラとしての位置づけを越え、実世界(フィジカル空間)とコンピュータやネットワークなどの中の仮想に置かれた空間(サイバー空間)とが有機的に統合され、それらの相互作用で物事が進んでいくサイバーフィジカルシステム(CPS:Cyber Physical System)の概念が提唱されている。CPSの活用により、実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析・知識化を行って、フィジカル空間を最適に駆動することにより、産業の活性化や社会問題が解決されることが期待されている。Beyond5G研究開発推進ユニットは、NICTにおけるBeyond 5Gの実現に向けた研究開発の司令塔としてNICT内の先端的な要素技術の研究開発を強力に推進するとともに、これまで物理的・社会的に分断されていた分野を異にするコミュニティー相互が協働・共創できる場としてBeyond 5Gを機能させることで、全ての人が自ら新たな価値を自由に創造することができ、Beyond 5GがSDGsやSociety 5.0の達成に繋がるような社会基盤となることを目指している 。組織発足の初年度である令和3年度は、刻一刻と変わるBeyond 5Gの研究開発動向を睨みつつ走りながら考えるアジャイルなマネジメントスタイルを取り、 NICTが関わるBeyond 5Gに係る研究開発全体を俯ふ瞰かんした上で、ミッシングリンクの発見、重点化すべき課題の抽出、アーキテクチャの議論、ホワイトペーパーを通じた情報発信などを進めるとともに、この一年で研究開発戦略の基本的なフレームワークを確立した。■主な記事1.Beyond 5G研究開発実施体制の構築2030年頃のBeyond 5G実現の鍵を握る要素技術等の早期創出を目指した集中取組期間において、Beyond 5Gに係るNICT内の自主研究を各研究所とともに推進するBeyond5G研究開発推進ユニットとBeyond5G研究開発促進事業を進めるオープンイノベーション推進本部とが連携して適切な管理と効果的な推進を行うことにより、自主研究と委託研究の相乗的成果を創出する研究開発実施体制を構築した。その体制の下で、潜在的なステークホルダと共にBeyond 5G時代を支える新たなサービス創出するオープンコラボレーションの実現を目指して、ホワイトペーパーを通じたBeyond 5G概念形成を進めるとともにNICT内外の有識者等との間でその概念の共有を進め、また、概念に沿った自ら研究の強化及びオープンイノベーション推進本部による公募型研究開発プログラムの具体的取組を進め、ハイレベルな研究課題活動を推進する全体として研究開発を推進するシステマティックな仕組みを構築した。(図1)このうち、自主研究においては図1 Beyond 5G研究開発実施体制3.6Beyond5G研究開発推進ユニットユニット長 寳迫 巌
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