136■概要Beyond 5G時代の更なる通信の高速化・大容量化が期待される将来の情報通信基盤を実現するため、テラヘルツ波ICT・センシング技術を支える計測・評価・実装・利活用を行うプラットフォーム基盤技術の研究開発を実施する。特にテラヘルツ帯電波特性やデバイス周波数特性等の計測評価技術の開発を通じ、テラヘルツ帯電波を利用した様々なシステムの計測評価基盤を構築するとともに、テラヘルツ波ICT・センシング技術確立の加速化に向けた利用促進を目指す。これらの研究開発成果を基にテラヘルツ波ICTシステムの社会実装に向け、周波数割当てをはじめとする国際標準化活動等の推進に貢献する。令和3年度は、テラヘルツ送受信基盤技術や、テラヘルツスペクトラム計測のための基盤技術を重点課題として研究開発を推進し、研究開発成果を最大化するための業務として、ITU-RやIEEE802等のテラヘルツ国際標準化活動を推進した。■令和3年度の成果1.テラヘルツ無線テストベッド基盤技術Beyond 5G時代に必要不可欠なテラヘルツ通信技術実現のため、広帯域な光ファイバー通信技術等を活用したテラヘルツ波信号生成・受信技術の検証を実施している。一般的に搬送波周波数300 GHzを超えるテラヘルツ波は波長が1 mm程度以下と短いため回折現象が引き起こされにくくビーム状の無線通信様態となるが、通信リンク確立のためには小型かつ高性能なアンテナ技術が必要不可欠である。また、毎秒100ギガビットを超える超大容量テラヘルツリンクの実現には、周波数利用効率が高い多値変復調方式の採用が必要不可欠であり、高精度な変復調方式のテラヘルツ通信への最適化、低雑音かつ高周波動作が可能な高精度信号源の実現が重要課題である。令和3年度は、周波数300 GHzを超えるテラヘルツ通信用アンテナの特性計測技術の構築を行い評価技術の確立を目指した。図1にNICT 6面大型電波暗室内に構築した、テラヘルツ帯アンテナ遠方界計測系の概要を示す。テラヘルツ送信側と受信側を13 m程度離隔し、受信側アンテナを回転させることでアンテナ放射パターンを計測するシステムである。本計測システムを利用し、オフセットパラボラアンテナやカセグレンアンテナ、標準ゲインホーンアンテナ等のアンテナ放射パターン計測を実施した。計測結果は評価を行い、アジア太平洋州における国際標準化機関であるアジア・太平洋電気通信共同体(APT)下のAPT無線グループ(AWG)においてテラヘルツ無線技術レポート文書案への寄与を実施した。また、テラヘルツ通信信号の低雑音化を目指し、注入同期型光電気発振回路技術を用いた位相雑音補償技術の検証を実施した。光ファイバーループ回路による高Q値と長共振器長により位相雑音が低減できる光電気発振回路へ、従来技術によるミリ波・テラヘルツ信号を入力することで、位相雑音を低減させる方式である。周波数102 GHzの信号を入力した結果、周波数オフセット2kHz時の単側波帯位相雑音が5 dB改善される効果を得た。この技術を送受信機局発信号源として用いることにより、周波数間隔の狭いマルチキャリアシステムでの多値変復調技術が実現できるものと期待される。2.テラヘルツスペクトラム計測基盤技術テラヘルツ帯におけるスペクトラム計測はこれまで、波長分散型分光器やフーリエ変換赤外分光光度計、テラヘルツ時間領域分光法等によって行われてきたが、同帯域における周波数標準及び出力標準が存在しないため確図1 (上)構築したテラヘルツ帯アンテナパターン遠方界計測システムと(下)計測したカセグレンアンテナの放射パターン3.6.1.1テラヘルツ連携研究室室長 関根 徳彦ほか15名テラヘルツ帯の有効利用による快適なBeyond 5G社会の実現
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