162■概要委託研究推進室では、「高度通信・放送研究開発委託研究」により、NICTが自ら行う研究と一体的に実施することで効率化が図られる研究開発課題について、外部の研究リソースの有効利用による効率的・効果的な研究開発を推進している。また、2030年代のあらゆる産業・社会活動の基盤となる次世代通信インフラBeyond 5Gの実現に必要な要素技術を確立するために令和2年度に開始した「Beyond 5G研究開発促進事業」における「革新的情報通信技術研究開発委託研究」により、民間企業や大学等での研究開発を促進した。これらの委託研究の実施にあたっては、外部有識者で構成される評価委員会の審査を経て受託者を決定している(図1)。■令和3年度の成果1.高度通信・放送研究開発委託研究の推進令和3年度においては、前年度から継続して実施する研究開発課題16件に加えて、新たに3件の研究開発課題に着手した(詳細は、6.1.1参照)。NICTの研究者がプロジェクトオフィサーとして委託研究を統括し、NICTの研究開発と一体となった研究開発を行うことで、効果の最大化を図っている。研究成果として、論文発表102件、一般口頭発表204件、標準化提案71件及び産業財産権出願50件(国内22件、外国28件)が挙げられた。(1)令和3年度に終了した研究開発課題の主な成果− Beyond 5Gに向けたモバイル収容大容量光アクセスインフラの研究開発 −Beyond 5G時代のモバイルサービスを収容するために、RoF(Radio over Fiber)・IFoF(Intermediate Frequency over Fiber)伝送方式をベースとした光アクセスインフラの研究開発を実施した。RoF・IFoFハイブリッドモバイルフロントホールとして、上りリンク96 Gbps超、下りリンク120 Gbpsの伝送容量を達成した。また、64素子のフォトニックアンテナアレイを開発し、100μsec未満のビーム切替え時間を実現した(図2)。(2)令和3年度に着手した研究開発課題の主な取組− ウイルス等感染症対策に資する情報通信技術の研究開発 −新型コロナウイルス感染症の流行により、これまでとは異なる“新しい生活様式”の導入を余儀なくされ、ソーシャルディスタンシングや3密回避等、これまでの資源の集中配置による効率性の追求とは相反するため、様々な社会的、経済的課題が表面化している。さらに、将来、別の病原体による同様の世界的な感染爆発、いわゆるパンデミックが発生する可能性は十分にあり、パンデミック対策へのICTの貢献は重要となる。このような状況において、A)ウイルス等感染症により発生するパンデミック対策に資するICTB)新型コロナウイルス感染症対策“新しい生活様式”を実現するためのICTC)アフターコロナ社会を形成するICTの3段階に対応した計8個別課題の研究開発に着手した。2.革新的情報通信技術研究開発委託研究の推進令和3年度は、「Beyond 5G研究開発促進事業」の各プログラム(図3)において、前年度から継続して実施する機能実現型プログラム基幹課題1件に加えて、新たに43件(機能実現型プログラム基幹課題5件、機能実現型プログラム一般課題20件、国際共同研究型プログラム3件、シーズ創出型プログラム15件。詳細は、6.1.2参照)の研究開発課題について採択し、契約を締結、研究開発に着手するとともに、今後の研究計画について確認するスタートアップミーティングを開催した。採択した課題は多岐にわたる技術分野をカバーしており(図4)、特にBeyond 5Gのネットワーク基盤となる無線・光通信分野図1 委託研究のスキーム3.10.2委託研究推進室 室長 青木 美奈ほか29名民間企業や大学等の研究リソースを活用した研究開発の推進
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