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18■概要電磁波研究所は、ICTの中でも特に「電磁波」に関する様々な技術の研究開発と、それら技術の社会での活用に関する活動を推進する組織である。当研究所は、電磁波を活用することによりSociety 5.0を実現させることを目指しており、その過程において、以下に示す3つの役割を果たしていく。・多様なセンサを使って、フィジカル空間の情報をサイバー空間に集約する「センシング(計測・観測)」の機能を実現する役割・多種多様なデータを解析することにより、「未来の姿」をサイバー空間上に作り上げる「プロセッシング(情報の加工・処理)」の機能を実現する役割・サイバー空間上のデータを活用して、フィジカル空間を作り上げる「アクチュエーション(作動・行動)」の機能を実現する役割さらに、各役割から得られた成果を効果的に連携させ、その結果、気象の変化や宇宙環境の変化の早期かつ精密な把握や、災害等の非常時を含む社会状況の正確な把握を実現するとともに、精度の高い未来予測を可能にして、実社会における私たちのスマートな生活を実現させることを目指す。第5期中長期目標期間の5年間では、電磁波を利用して、社会を取り巻く様々な対象から情報を取得・収集・可視化・提供するための技術や、様々な機器・システムの電磁的両立性(EMC:Electromagnetic Compatibil-ity)を確保するための技術、効率的な社会経済活動の基盤となる高品質な時刻・周波数を発生・供給・利活用するための基盤技術、低コストで高効率な光学素子を実現するための基盤技術について研究開発を実施するとともに、国内外における標準化や研究開発成果の普及、社会実装につなげる活動を行う。また、電磁波技術分野の将来を担う研究開発人材の育成にも力を入れていく。これらの活動を行うために、当研究所の中に3つの研究センター、5つの研究室、そして活動全体を効果的に推進する「総合企画室」を設置した。・電磁波伝搬研究センター:リモートセンシング研究室・宇宙環境研究室・電磁波標準研究センター:電磁環境研究室・時空標準研究室・電磁波先進研究センター:デジタル光学基盤研究室■主な記事電磁波研究所における令和3年度の主なトピックスを以下に示す。なお、1. の詳細については、それぞれの研究室の報告において記す。1.各研究室における活動の概要(1)リモートセンシング研究室・航空機搭載合成開口レーダー「Pi-SAR X3」の研究開発を進め、初の本格的な観測飛行と技術的な実証を12月に実施し、世界最高レベルの分解能15 cmを有していることを実証して、成果を報道発表した。・NICTが運用する「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダー」のデータを用いて、防災科学研究所や日本気象協会等の外部組織と協力して、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、東京都オリンピック・パラリンピック準備局にリアルタイム気象予測を提供する実証実験を行った。・地上デジタル放送波を用いた水蒸気量観測について、戦略的イノベーション創造プログラム第2期の枠組みで民間企業と共同で九州地方に観測装置の設置を進め、15地点の観測装置による観測網が完成した。・日本・欧州共同で開発を進めている地球観測衛星「EarthCARE」の打ち上げ後に実施する地上校正に向けて能動型校正装置を改修するとともに、地上検証用W帯高感度雲レーダーにより雲鉛直分布等のデータを取得した。(2)宇宙環境研究室・情報通信研究機構法(以下、機構法)第14条第1項第4号に定められている「電波の伝わり方の観測、予報・異常に関する警報の送信等」の業務を着実に行うために、国内4か所の電波観測施設及び南極においてイオノゾンデによる電離圏観測を24時間365日実施し、宇宙天気予報を発出した。・総務省からの委託研究「ひまわりの高機能化研究技術開発」に東京都市大学と共同で採択され、衛星に搭載が可能な高エネルギー粒子計測装置の開発及び内部帯電計測装置の開発に着手した。・「太陽フレアAI予測モデル(DeFN-Reliable)」のリアルタイム版を開発し、ウェブで公開して外部利用を可能に3.1電磁波研究所研究所長  平 和昌

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