I理事長挨拶徳田 英幸情報通信研究機構(NICT)は、ICTを専門とする我が国で唯一の国立研究開発法人として、未来社会を切り拓ひらく情報通信技術の研究開発へのチャレンジと、その社会展開のためのコラボレーションやオープンイノベーションの推進を一体的に進めております。一昨年からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、社会経済活動をアナログ・対面型からデジタル・オンライン型へと大きくシフトさせました。今後のウィズコロナ・アフターコロナ社会に向けて、社会の更なるデジタルトランスフォーメーションを進めることが重要です。また、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際社会の秩序を根底から揺るがす暴挙として、今後の国際社会の様相を大きく変貌させ、予測することが困難な時代へと向かわせています。このハイブリッド戦争におけるサイバー攻撃、SNSを利用したフェークニュースの拡散など、ますます社会インフラとしての情報通信インフラの重要性や情報の信憑性の担保が問われています。また、最近注目の集まる経済安全保障においては、重要インフラのセキュリテイ対策、AI や量子情報通信など先端研究に注目が高まっています。これらはNICTがこれまで重点的に取り組んできた分野であり、今後はますます研究機関としての役割が重視されるだけでなく、国内の研究開発のハブとして、産学官のコラボレーションに主体的な役割を果たすことが期待されるものと感じています。令和3年度は、第5期中長期目標・計画(令和3~7年度)の初年度に当たります。第5期中長期計画では、新たなICT技術 戦略に基づいた重点5分野(電磁波先進技術、革新的ネットワーク、サイバーセキュリティ、 ユニバーサルコミュニケーション、フロンティアサイエンス)の研究開発とオープンイノベーション の推進という主なミッションに加えて、Beyond 5G、AI、量子情報通信、サイバーセキュリティ といった戦略4領域の研究開発を積極的に進めております。初年度である令和3年度は4月にBeyond 5G、量子情報通信の2つの分野で、それぞれホワイトペーパーを発行し、上記の各分野において、推進体制の再整備を行いました。5つの研究所組織に再編するとともに、Beyond 5G、量子情報通信、サイバーセキュリティといった分野では新たにコラボレーションを加速するために、国内外の研究開発活動の拠点となる組織を新設しました。AI分野では、多言語音声翻訳技術を更に進化させ、2025年頃までに同時通訳レベルの機能を提供し、言葉の壁のない世界を目指す取組を進めています。さらに、NICT自身の運営方針は、従来のCOCを更に進め、COC 2.0(Collaboration, Open Mind & Open Innovation, Challenger’s Spritに加えてDX及びComputing & Communication for Carbon neutral)として、DXの更なる加速とカーボンニュートラルプロジェクトの推進を目指していきます。本年報を、NICTをご理解いただく一助として、さらには、NICTとの一層の連携推進にご活用いただければ幸いです。今後とも変わらぬご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
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