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22■概要電磁波伝搬に大きな影響を与える大気・地表面の状態把握と、その情報を活用した防災・減災をはじめとする社会課題解決に向けた分析・予測等に役立つリモートセンシング技術の研究開発に取り組んでいる。ローカルセンシング技術の研究開発においては、局所的(ローカル)な電磁波伝搬に大きな影響を与える大気中の水蒸気・雲・降水などの分布や、地面・構造物・植生等を含む地表面や海表面などを高精度に把握する観測・分析技術の研究開発を行い、防災・減災のみならず、平常時においても生活の質の向上に有用な情報を提供するなど、実社会で活用される成果の創出を目指している。具体的には、航空機搭載合成開口レーダー(Pi-SAR X3)の性能評価のための観測実験の実施、ドローン搭載適合型映像レーダー(DAIR)の試作機の開発、マルチパラメータ・差分吸収ライダー(MP-DIAL)を構成する各コンポーネントの開発、マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダー(MP-PAWR)を活用したゲリラ豪雨等の早期捕捉や発達メカニズムの解明に関する研究、地上デジタル放送波を利用した水蒸気量観測について九州北部の観測網の整備、ウィンドプロファイラ(WPR)の測定データ品質向上を目的とした信号処理手法の高度化、センシングデータの利活用のための研究開発としてAI技術を用いた情報抽出技術の開発等を行う。グローバルセンシング技術の研究開発においては、地上・上空・衛星相互の電磁波伝搬に大きな影響を与える大気中の雲・降水などの分布を、衛星に搭載されたリモートセンサを用いて全球的(グローバル)かつ高精度に把握する技術及び取得された情報を分析する技術の研究開発を行い、地球規模の気候変動の監視や天気予報の予測精度向上、地球温暖化・水循環メカニズムなどの解明に資することを目指している。具体的には、雲エアロゾル放射ミッション(EarthCARE)衛星の打ち上げに備えた準備、全球降水観測計画(GPM)の後継となる将来の衛星搭載センサの開発に向けた検討等を実施する。■令和3年度の成果1.ローカルセンシング技術Pi-SAR X3について、初の本格観測・技術実証を令和3年12月に実施し、同レーダーが世界最高レベルの15 cm分解能を有することを実証した。田んぼにできたトラクターによる“わだち”の観測にも成功し(図1)、今後地震や火山噴火等の自然災害による地表面の変化を今まで以上に詳細に把握すること、さらに環境モニタリング、船舶や漂流物等の海面監視などへの利用可能性を示すことができた。DAIRの開発では、ドローン搭載用のレーダー試作機の設計・製造を行った。SARの信号処理では、AIを用いた土地被覆分類処理の高速化を実施したほか、SARデータのスパース性を利用した信号処理的高図1 Pi-SAR X3による観測例 拡大右図が従来機(Pi-SAR2)相当の30 cm分解能、拡大左図が15 cm分解能による田んぼの画像。15 cm分解能では、田んぼの“わだち”が鮮明に見えている。拡拡大大拡拡大大分解能15cm010 [m]分解能30cm010 [m]図2 NICTで内製したMP-DIAL用2 µm帯種レーザー3.1.1.1リモートセンシング研究室室長  川村 誠治ほか14名安心・安全な社会を実現するためのリモートセンシング手法の創出

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