24■概要当研究室では、主に太陽を起源とする電磁波や高エネルギー粒子、磁気圏及び電離圏のじょう乱などの宇宙天気現象を監視し、宇宙天気予報を毎日提供するとともに、宇宙環境の現況監視及び予測・警報を高度化する技術及び宇宙天気予報を安定的に遂行するために必要となる技術を開発している。宇宙環境の現況把握及び予測に関する研究開発として、地上・衛星等からの宇宙環境計測技術、宇宙環境シミュレーション・データ同化技術、AI 技術等を利用した宇宙環境の現況把握及び予測・警報の高度化(より高精度の情報をより早期に提供する)に関する技術の開発を進めている。具体的には、衛星による宇宙環境計測センサの開発及び利用の検討、国内及び国際協力に基づく地上からの宇宙天気監視網の充実、大気・電離圏モデルを用いたデータ同化による電離圏じょう乱の予測モデルの実用化に向けた開発、太陽風数値モデルを用いた太陽嵐到達時刻予測精度向上スキームの開発、磁気圏・電離圏モデルの結合の検討を進めている。また、宇宙天気予報業務を安定的に遂行するため、国内太陽電波及び電離圏定常観測を滞りなく遂行するための基盤整備、国内及び国際的に情報を発信するシステム整備を進めている。宇宙天気予報の社会実装に係る活動として、宇宙天気ユーザーズフォーラム及び宇宙天気ユーザー協議会等を開催し、宇宙天気情報の利用者との交流を進め、ユーザニーズの調査を進めている。ユーザー協議会は各分野の議論を深化させるため、分科会体制とするなど体制を強化した。国際連携に係る活動としては、国際民間航空機関(ICAO)のグローバル宇宙天気予報センターのひとつACFJコンソーシアム(日本・豪州・カナダ・フランス連合)の一員として、民間航空運用に用いられる宇宙天気情報提供等運用を着実にしている。また、ITU-R、CGMS(気象衛星調整会議)等国際会議へ参加及び情報入力を行い、宇宙天気予報に関わる標準化に向けた活動を行っている。■令和3年度の成果1.研究活動・AI技術を用いたイオノゾンデ観測の電離圏エコートレース手法の機能を向上、自動化が難しかった電離圏F1領域の検出を可能とする手法を試作し、評価に取り組んだ。・東南アジア域電離圏観測網(SEALION)のウェブサイトをリニューアル、プラズマバブル監視用VHFレーダーのクイックルックの公開を開始した。また、プラズマバブル警報を出す「プラズマバブルアラートシステム」のプロトタイプを構築した。・総務省委託研究課題「ひまわりの高機能化研究技術開発」に採択、衛星搭載が可能な高エネルギー粒子計測装置の開発(JAXAと共同研究契約締結)及び内部帯電計測装置の開発(東京都市大学と共同研究契約締結)に着手した。・大気・電離圏モデルGAIAにアンサンブルカルマンフィルタ手法を用いて電離圏全電子数(TEC)データを同化、太陽紫外光強度を推定パラメタとして、日中のTECについて再現性を改善した。・短波電波伝搬シミュレータ(HF-START)について、ユーザーからのフィードバックを反映した改修及び機能向上を進めた。・アンサンブル太陽風到来予測システムの本格運用を開始、 令和3年10月29日に発生したX1.0クラスフレア太陽嵐の影響を予報し、結果の検証を実施した。・磁気圏シミュレーションを用いた静止軌道衛星の表面帯電リスク評価システムを公開、衛星事業者や衛星開発者との意見交換を行い、よりユーザーフレンドリーなシステムへ拡張した。・改良版太陽フレアAI予測モデル(DeFN-Reliable)をリアルタイム化・ウェブ公開し、予報会議での利用を開始した。2.宇宙天気予報業務に係る活動・コロナ禍の影響を受けないようにウェブ会議システムによる遠隔宇宙天気予報会議等を活用して、予報業務を継続的・安定的に実施した。3.1.1.2宇宙環境研究室室長 津川 卓也ほか25名宇宙天気予報精度向上とニーズに即したサービス提供
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