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293●電磁波先進技術分野較正方法と標準ループアンテナを用いて、ISO/IEC 17025規格(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)に準拠するとともに国際相互認証(国際MRA)にも対応した較正サービスを着実に実施しており、国際的に通用する妨害波測定を国内でも実施可能にした。2.生体EMC技術 5Gスマホ等のミリ波帯電波を発射する携帯無線端末からの入射電力密度が電波防護指針に適合していることを確認する方法が総務省告示で規定されており、同様の内容の最終国際規格案が承認されている。国内で5Gサービスが始まり、今後ミリ波帯携帯無線端末が急速に普及していくことに伴い、実際に市販されているミリ波帯携帯無線端末に対して、日本における適合性評価方法の妥当性を確認する必要がある。このことから、通話状態での人体側頭部を対象に、側頭部のモデル・空間平均電力密度の定義・メインビームの方向等の組合せ300条件について、28 GHz帯での入射電力密度の最大空間平均値の評価データを取得し、この評価データにより国際規格で規定されている側頭部のモデル形状が妥当であることを明らかにした。 5Gの本格導入やBeyond 5G/6Gに向けた研究開発の進展を背景に、電波利用の発展と拡大に伴うリスクの可能性について適切な説明と対話を可能とするリスクコミュニケーションが求められている。そのためには、日常生活における電波環境を網羅的に明らかにし、人体ばく露の実態について定量的な根拠に基づく理解を深めることが重要である。そこで、携帯電話基地局等からの電波ばく露レベルについて、令和元年度には市街地と郊外、令和2年度には地下街において合計500地点以上にわたり測定を行い、この測定結果について令和3年度にとりまとめと統計解析を行った。同一地域における過去(約10年前)の測定結果と比較したところ、市街地・郊外共に、現在のほうが電波ばく露レベルは上昇して(3倍程度)おり、特に地下街では不感地帯が解消されていることにより顕著に上昇している(100倍程度)ものの、いずれの場合も電波防護指針に対しては十分に低いレベル(中央値で約1万分の1以下、最大値で約1千分の1以下)であることが明らかとなった(図2)。本データは我が国で初めて電波ばく露レベルの長期変動を示したものであり、今後本格的に普及が進む5Gによる電波ばく露レベル変動の比較参照データとなるものである。3.無線設備の機器の較正業務機構法第14条第1項第5号業務において、電波法における無線局制度の国内最上位に位置付けられる較正機関として、前年度を上回る74件の較正作業を着実に実施し、電波の公平かつ能率的な利用の実現に貢献した。特に110-330 GHz用の電力計やスペクトラムアナライザの較正を10件実施して、新スプリアス規格に対応できる体制を整備し、5Gベンダー等の無線機器・測定機器メーカー等に提供できる体制を整えたことに加えて、300 GHz帯の無線局(実験試験局)の免許申請・交付ができるようにした。その結果、実験試験局を用いた屋外実験が可能になり、Beyond 5Gの技術開発に大きく貢献した。4K/8K放送の受信設備等に必要な75Ω系の電力計較正システムをISO/IEC17025に対応させるとともに国際MRA認定も合わせて取得し、JCSS登録事業者として我が国で唯一のサービス提供を継続した。これにより、国内で開発されたテレビ等、受信設備の輸出に必要な性能試験を国内で実施できるようになり、輸出先で行っていた試験に掛かる経費の削減を可能にした。周波数標準器の較正については、国家標準である周波数原器が生成する周波数と直接比較した較正結果を提供するjcss校正を実施する指定校正機関(計量法における国内最上位の校正機関)として、国外の専門家によるレビューを含む継続審査を受けて合格し、我が国の計量システムの維持に務めた。さらに、国際相互認証(国際MRA)を可能とするASNITE認定も更新し、NICTによる較正結果が国外でも受入れられ、諸外国との取引において重複して行われていた輸出先国での試験を省くことができるOne-stop Testingを可能にした。図2 携帯電話基地局周辺の電波強度を500地点以上で測定し、過去の測定結果と比較することで、我が国で初めて電波ばく露レベルの長期変動を明らかにした。市街A市街B郊外B郊外A地下街50000.40.20電力密度[mW/m2]電波防護指針値1/10,0000.00140.66000今回の測定値過去の測定値電界プローブ3.1.2 電磁波標準研究センター

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