353●電磁波先進技術分野と比較して約3倍の大きさとなる性能に相当する。レーザービーム用いた空間光通信はホログラムとの相性がよく、また精追尾機構を搭載した装置に比べて遅延や動作の不安定性が解消されることから、今後も実用化に向けた研究開発を進めていく。3.機械学習を用いた設計の効率化HOEは単一の光学素子でも様々な機能を実現することができるが、機能の設計にはホログラムプリンタによって決まる様々な制限が存在する。しかし、複数枚のホログラフィック光学素子で特定の機能を実現する協調設計により表現力が増え設計の制限を拡張することができる。このような設計はこれまで複雑な設定が必要などの要因から難しかったが、実現したい機能から機械学習により回折パターンへのバックキャストを行いHOEの設計自動化を行う手法を新たに開発した。本手法により複数枚のホログラフィック光学素子の協調設計が可能になる。実験では、結像系の機能を学習し自動設計した2枚の回折パターンを空間光変調器に表示し、所望の機能が実現できていることが確認できた(図3)。今後もHOE素子の自動化設計の研究開発を進めていく。4.精密光学測定自然な光のホログラムを記録する、自然光デジタルホログラフィをコア技術として、顕微鏡等の測定機器としての応用展開を志向した。令和3年度はLEDを光源として透明体の屈折率差や3次元情報を測定する、ホログラフィック定量位相顕微鏡システムを未来ICT研究所とともに開発した。この成果は米国光学会(OPTICA)発行のOSA Continuum誌に掲載された。また、蛍光画像の測定にも切替えが可能な、自然な光のホログラフィック定量位相動画測定光学システムの開発に成功し(図4)、この成果はOptics Express誌に掲載された。また、振動に強く、持ち運べるホログラムセンサの試作に着手した。1辺が約25 mmとコンパクトな手のひらサイズのホログラムセンサの試作に成功し、物体の3次元測定が可能であることを実証した(図4)。この成果はOSA Continuum誌に採録され、さらにEditor’s pickに選出された。4種類のホログラムセンサを試作しながら検討を重ね、LEDや太陽光のフルカラーホログラムを単一露光で記録可能な自然光デジタルホログラフィ光学システムの試作に成功した(図4)。図1 ホログラムプリント技術及び露光装置に起因する波面収差の補償・改善補正により記録波面の収差が改善Zernike多項式による波面収差の評価・改善ホログラムプリント技術XRデバイスに組み込むHOEの試作例空間光通信デバイスに組み込むHOEの試作例様々な光学機器への組み込みを想定したHOEを試作図2 小型化・軽量化に寄与する光通信用モジュールの例光センサ受信器フィードバック制御装置遅延発生装置が複雑可動部あり駆動鏡遅延ゼロ可動部なしシンプル受信器ホログラム通信光図3 機械学習を用いたHOE設計の効率化の取組図4 定量位相顕微鏡及び振動に強く、持ち運べるホログラムセンサ3.1.3 電磁波先進研究センター
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