40■概要未来社会を想像するときSociety 5.0が一つの重要なキーワードであり、明るく豊かな人生のために、もしくは暗く耐え難い社会課題を解決するために、多くの魅力的なアプリケーション(パーソナルモビリティ、遠隔医療・介護、デジタルツイン、リアルアバターなど)が期待される。これらは人間の時間的、空間的、物理的(身体的)、さらに精神的な開放につながるが、このような高度社会には、物理空間で発生する大量情報と、データセンタ内で演算された情報を相互作用させるサイバーフィジカルシステムが必要であり、結果として大容量・超高速で低遅延な情報通信インフラが必須となる。また、身近な通信では「わずかに動くモノ」が多く存在することから、光ファイバ通信と無線通信の融合が重要となり、図1に示すような光と電波が融合したネットワークインフラが必須となる。高度で革新的なデバイス技術は、このようなサイバーフィジカル社会を支える新たなインフラを創造・構築する上で重要となる。デバイス技術の研究開発を推進するためには、新たな材料物性やデバイス機能の発見、適切なデバイス構造による機能の効率的発現、さらに環境負荷やコスト等を考慮したサステナビリティなど、理学・工学にまたがる広い知見が必要である。このため、デバイスの研究開発では、多くの知見を得るために様々な分野の研究者が情報交換し、連携しながら進めることが肝要となる。このような背景の下、NICTではチャレンジングで先端的なデバイス基盤技術の研究開発を推進するために「先端ICTデバイスラボ」を組織化しており、デバイス分野における産学官のオープンイノベーション拠点として機能している。先端ICTデバイスラボでは、広い範囲の「デバイス基盤」の研究開発が実施されており、将来の情報通信インフラへの応用はもちろん、基礎科学や社会展開などの日本の産業のシーズになり得る新たな知の創造に貢献すると期待される。■令和3年度の成果デバイス基盤技術とシステム基盤技術は図2に示すように相互に干渉しながら高度化されるため、どちらが欠けても将来の社会インフラを構築することはできない。大容量光ネットワークや光・電波融合ネットワーク、高周波無線ネットワークなどで構成される革新的インフラ技術:Beyond 5Gを具現化するために、先端ICTデバイスラボはその研究開発拠点として機能している。以下に令和3年度の成果を列記する。1.オープンラボとしての展開とデバイス加工技術の高度化先端ICTデバイスラボでは、光ネットワーク大容量化のための高速光・電子集積デバイス技術や、光と電波(ミリ波やテラヘルツ波等の高周波)を融合して活用する革新的デバイス技術、情報通信インフラの低消費電力化に寄与する酸化物半導体デバイス技術、次世代信号処理のための量子デバイス技術、超伝導エレクトロニクス技術、ナノ構造・有機半導体等の先端材料を用いた各種要素デバイス、フィジカル空間(マルチレイヤ)ホログラム遠隔ロボットなど光ネットワークデータセンターネットワークマイクロデータセンター/エッジコンピューティング高周波アンテナ光ネットワークXR&メタバースサイバー空間フィジカル空間CAVセンサー安全アバター掲示板高速移動体サイバー都市IoT センサーからの信号危険危険遠隔医療・介護サイバー空間(マルチレイヤ)パーソナルモビリティHAPS地方都市デジタルツイン&シミュレーション光LAN革新的ICTデバイス通信衛星ドローン都市空間都市空間デジタルツイン都市インスタンス光/電波時間的、空間的、物理的、精神的に自由な社会図1 未来社会の様々なサービスアプリケーションを支える情報通信ネットワークインフラ3.2.1先端ICTデバイスラボラボ長(兼務) 山本 直克ほか6名未来社会を形作る革新的デバイス技術の創出をめざして
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