46■概要近年、第5世代モバイル通信システム(5G)の普及やデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に加え、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためのサービスのオンライン化等、通信トラヒック増大の傾向は今後も続くと予想される。2030年代には、サイバー空間と現実世界(フィジカル空間)が一体化するサイバー・フィジカル・システム(CPS)の構築と、それを活用した様々なシステムの実現により、社会経済活動の活発化・効率化や安全・安心な社会の到来が期待されている。本研究室では、このCPSの技術基盤となるBeyond 5G情報通信ネットワーク構築に資する、超高速・大容量、柔軟性・高弾力性等の機能を実現し、増大を続ける通信トラヒックに対応可能にするために、以下のフォトニックネットワーク技術の研究開発に取り組んでいる。1.マッシブチャネル光ネットワーク技術マルチコアファイバ・マルチモード方式等の空間多重技術の活用や新たな光波長帯域の開拓を目指し、光ネットワークの飛躍的な大容量化を達成するための研究開発に取り組む。2.光ネットワークリソースの動的再構成及び利用効率化技術多様な通信サービス要求に対して最適な通信環境をオンデマンドで提供するために、プログラマブルな制御が可能な光ネットワークを実現するハードウェア技術や光資源有効利用技術の研究開発に取り組む。3.短距離向け超高速光リンク技術モバイルフロントホールを含むアクセスネットワークやインターコネクションについて、ユーザ当たりテラビット超の短距離光リンク技術の研究開発に取り組む。■令和3年度の成果1.マッシブチャネル光ネットワーク技術既存のケ―ブル製造設備が利用可能で大容量長距離伝送の早期実用化が期待できる標準外径(0.125 mm)4コア光ファイバを用いた二種類の伝送実験に成功した。一つは、広帯域波長多重技術を駆使した光伝送システムを構築し(図1)、大容量長距離(319 Tbps・3,001 km)伝送実験に成功した。これまで利用されている波長帯域(C帯、L帯)に加え、利用が難しく一般的に商用化されていないS帯も用いて広帯域化し、552波長多重により大容量化を図った。さらに、希土類添加ファイバを使った増幅器とラマン増幅の2種類の光増幅方式を駆使し、3,001 kmの長距離伝送に成功した。この結果は、伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると、毎秒957ペタビット×kmとなり、標準外径光ファイバの世界記録となる(図2)。本実験結果の論文は、図14コアファイバを用いた長距離光伝送実験系周回総計3,001km光コム光源552波長偏波多重、変調69.8km周回スイッチ4ココアア光光フファァイイババ受信器ラマン増幅エルビウム添加ファイバ増幅器ツリウム添加ファイバ増幅器4コア多重4コア分離ラマンレーザー3.2.3.1フォトニックネットワーク研究室室長 古川 英昭 ほか19名Beyond 5G以降の通信トラヒックを支える光ネットワーク技術
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