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48■概要当研究室では、光、電波などの伝送メディアを意識せずに自由に取り扱うことができるアクセスネットワークの実現を目指し、デバイス・ハードウェアを主に扱う「マッシブ集積ICTハードウェア技術」と送受信技術・システムを主に扱う「伝送メディア調和型アクセス基盤技術」の研究開発を推進している。サイバーフィジカル社会において情報伝達の血流となるBeyond 5Gネットワークの実現に向け、光と電気だけでなく電波機能もハードウェアに集積し高機能化と低消費電力化を実現する「マッシブ集積ICTハードウェア技術」の研究開発を材料・デバイス製造プロセスから実施し、チップ化、モジュール化まで行っている。開発したハードウェアを活用し、光、電波、空間光などの通信伝送メディア選択を協調・調和的に行うことで広帯域性と大容量性、高い可用性を実現する「伝送メディア調和型アクセス基盤技術」の研究開発を行っている。また、NICT技術の社会展開・社会実装へ向け、産学官連携による研究開発の取組も合わせて推進している。■令和3年度の成果令和3年度は上記三つの取組について、以下の研究開発を実施した。1.マッシブ集積ICTハードウェア技術集積化によるデバイスの実装面積削減や動作電力の低減によるハードウェアそのものの低消費電力化を見据え、光通信機能と電波通信機能を集積・融合する研究開発を実施した。光源、変調機能など光機能をワンチップに集積し高機能化を図る取組を推進し、シリコンフォトニクス技術による要素機能デバイスの高密度集積化を達成した。今後は更なる高密度化を目指した取組を継続して実施する。また、レーザー光源においては、その動作安定のため温度調整機能が必要不可欠であったが、レーザー材料として量子ドット構造を活用しイオン注入技術による混晶化を実施することにより、レーザー発振閾値の温度特性を向上させた。動作温度15~50℃において特性温度T0として1,000 Kに迫る特性が実現可能であることを示した。以上の取組によりハードウェアの省電力化において一定の成果を得た。また、光ファイバー通信における大容量性の向上のみならず、空間上をレーザー等光信号がビーム状に伝搬し通信を行う空間光通信の高度化と実装に向け、光検出器を2次元アレイ状に配置した2次元高速光検出器アレイによる研究開発を推進した。データセンター等で活用されている複数本の光ファイバーを束ねたバンドル光ファイバーを送信機として用い、2次元光検出アレイを空間受信器として利用することで、バンドル光ファイバーの各ファイバーコアから出射された信号を独立に受信することが可能となる。変調速度10 Gbaudの64値QAM信号を4芯から出射し受信することで、ラインレート240 Gbpsの空間光伝送が実現可能であることを示した(図1)。加えて、アレイ型高速光検出器の信号取り出し部を工夫することで、あたかも一つの大面積光検出器として扱うことができる直並列接続アレイ型光検出器を新たに開発した(図2)。試作した400素子(20×20素子)00..88mmmm((2200××2200素素子子))周波数(GHz)0510152025単素子及び4素子400 (20×20)素子0-5-10-15-20相対利得(dB)光検出効率の周波数応答特性バンドル光ファイバーレンズレンズ2次元光検出器アレイ図1 バンドル光ファイバーと2次元光検出器アレイによる空間光伝送図2 光検出器の直並列接続による高速大実効面積光検出器3.2.3.2光アクセス研究室室長  菅野 敦史ほか11名光と無線をシームレスにつなぐアクセスネットワークの実現に向けて

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