493●革新的ネットワーク分野デバイスの周波数応答特性は素子単体の特性から顕著な劣化が見られず、広帯域応答性を維持しながら実効面積を100倍以上に拡大できることを示した。2.伝送メディア調和型アクセス基盤技術電波通信と光ファイバー通信をシームレスに接続する技術のひとつとして光ファイバー無線(Radio over fiber; RoF)技術の研究開発を推進している。無線信号を光変調技術により光信号へ重畳させることで光ファイバー中を伝送させることが可能な技術であり、光技術のもつ原理的な広帯域性によりミリ波周波数の無線信号だけでなくテラヘルツ帯の信号も収容可能である。Beyond 5G時代には、無線信号周波数の高周波化、広帯域化が予見されるため光変調技術の高周波化対応が急務である。そこで、100 GHz以上のミリ波帯信号を直接収容することを目指した高速光変調器を産官連携で開発した。光変調器の光電(EO)効果材料として利用されているニオブ酸リチウム(LN)結晶を薄膜化し周波数応答特性の改善を図ることで、周波数応答特性の改善を図った(図3)。光変調器の特性指標である半波長電圧は100 GHzにおいておよそ6 Vが得られており、100 GHzの高周波ミリ波信号でも有効な光変調が実現可能であることを示した。この変調技術をミリ波無線信号から光信号への変換デバイスとして活用することで、光ファイバー信号からミリ波信号を高速光検出技術により発生させ、空間伝搬したミリ波信号を高速光変調器により直接光信号へ変換することで、再び光ファイバー信号へと再変換する技術の実証を行った。周波数101 GHzにおいて、帯域幅10 GHz以上の直交周波数分割多重64値QAM信号を光ファイバー通信技術により発生させ、ミリ波変換・伝搬後に高速光変調器による光・無線直接変換器(図4)にて信号変換しRoF受信器にて受信信号を評価したところ、70 Gbps以上の伝送容量においてもシステム構築が可能であることを示した。ハードウェア開発と送受信システム開発を両輪として研究開発を推進することで得られた成果であり、Beyond 5Gにおけるミリ波~テラヘルツ波の活用を促す技術であり、光通信分野のトップカンファレンスである国際会議OFC2021において非常に高い評価を得て、最優秀論文(通称ポストデッドライン論文)に採択された。また、大容量光ファイバー通信を実現するコヒーレント通信において、受信時には光の強度情報だけでなく位相情報を同時に受信する必要があるため、コヒーレント受信器には高度な集積光回路と光局発信号源(レーザー光源)が必要である。そのため受信器構成が複雑となっていたが、デジタル信号処理による位相回復処理技術を活用することで、高速光強度検出器1台のみで位相情報も復元する技術について産学官連携で実証した。400 Gbpsを超える偏波多重16値QAM信号も単一光検出器とデジタル信号処理で受信・復調が可能であることを示され、受信器の簡素化のみならず光ルータなどに必要とされる光信号モニタ技術としても活用可能であることを示した。3.産学官連携による研究推進自動運転レベル5時代における車載センサの高画素か・大容量化要求を収容するため車載向け大容量光ファイバー通信技術の研究開発を産学官連携により推進した。光源と変調・検出デバイスを分離することで広範な動作温度要求が求められる車載システムにおいても大容量・低遅延ネットワークの実現が可能であることが示唆された。またITU-TにおいてRoF技術の国際標準化を推進しており補助文書G.Suppl.55改訂作業を実施した。加えて、IECやAPT等国際標準化団体において通信技術や光デバイス計測技術等の国際標準化活動を推進しており、NICT技術の社会実装に向けた取組を推進した。開発した薄板LN光変調器模式図100GHz対応電極100μm厚LN光導波路部支持基板光電変換周波数応答特性規格化EO応答特性(dB)0-5-10-15-20020406080100120周波数(GHz)開発品従来品図4 光・ミリ波直接変換型試作RoF送受信機の外観図3 薄板ニオブ酸リチウム基板による高速光変調器の周波数応答特性3.2.3 フォトニックICT研究センター
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