533●革新的ネットワーク分野た。また、自営網と公衆網のマルチリンク集約技術をサイクリングイベントの動画伝送に適用した実証の成果がSR研技術特別賞を受賞した。スペクトラム利用高効率化を促進する干渉把握技術として、500 MHzの広帯域で複数の既存システムからの電波到来方向を同時推定するアルゴリズムを開発し、SR研論文賞を受賞した(図2)。全二重無線通信の基地局実装技術として、フェージング環境下でも110 dB以上の自己干渉キャンセル性能を達成可能な怠惰学習を用いたデジタルキャンセラを開発し、国際会議IEEE PIMRC2021に採択された。さらに電力増幅器などの非線形性の影響を理論的に解析・評価する手法を開発し、特定の非線形性を有する場合に全二重無線通信の通信性能が最適化され、線形条件に対してシンボル誤り率の2桁低減を達成した成果がIEEE Trans. Wireless Commun.に採録された。高高度プラットフォームステーション(HAPS)と地上間のネットワーク制御に関して、フィーダリンクと通信リンクの共通リソースを空間・周波数・時間で分割する共用技術を開発した。工場での無線活用促進に寄与する「製造現場をガッカリさせない無線評価虎の巻」を発行し、その評価手法に基づき、国内自動車関連企業と共同で実工場の部品搬送工程に搬送機器を自動運転化する無線システムを導入し、無線通信安定化の実証実験に成功した(図3)。さらにフレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)によるSmart Resource Flow(SRF)無線プラットフォーム技術仕様書の一般公開に貢献し、また製造現場の制御処理パケット群の遅延補償制御に必要なパラメータ設定手法をIEEE 802.1QにAnnexとして追記するための新規標準化プロジェクトIEEE 802.1Qdqを立ち上げた。3.モビリティ制御・無線エリア拡張技術低遅延と多数接続を両立する無線アクセス技術STABLEについて、並列干渉除去と逐次干渉除去のハイブリッド方式を用いて非直交多元接続(NOMA)の演算量90%削減による低遅延化に成功し、屋外実験においてダウンリンクの平均パケット誤り率3.8%から1.2%に低減した(図4)。また、国内自動車関連企業と連携し、3GPP TSG RAN WG1へ標準化の寄書を入力した。機械学習による複数端末協調制御技術を提案し、最大25%の消費電力削減効果を示した論文がWCMCに採択された。端末協調通信について輻輳を改善する制御アルゴリズムを開発し、通信エリア内端末からの信号が所定の信号対干渉プラス雑音電力比(SINR)を満たす割合を示す平均受信率が70%以下の環境下で受信率99%への改善を示した。狭帯域無線をパイロットとして用いた超広帯域無線通信(UWB)チャネルアクセス方式を考案し特許出願を行うとともに、海外通信機器メーカらと共同で同方式の標準化の補強提案をIEEE802.15.4abに入力した。極限環境への無線エリア拡張に関する取組として、海中近接通信用の小型アンテナを検討し、長さ約16 cmの2.4 GHz帯アンテナにより約3 cmの距離で-60 dB程度の減衰で通信できる見込みを得た。また国内企業と連携し、模擬人体内を状に移動する飲込み型デバイスの位置を誤差10 mm以内で推定できることを実証した成果が国際会議IEEE EMBC 2021に採択された。検出率、提案手法()従来手法()両手法が同じサンプリングレートを持つ低速ADCを用いた場合の検出率の比較(信号数=10)復元⋮⋮低速ADC低速ADC低速ADCアンテナランダム選択⋮復元された角度・周波数スペクトルランダム遅延到来角度、スペクトル振幅周波数、送信機(干渉源)提案手法(MA-MCS)図2 電波到来角推定による干渉把握技術の概要(左)と検出率評価結果(右)図4 STABLE実験におけるDL送信ダイバーシチアンテナ(左)、車載移動局(右上)、屋内移動局(右下)図3 発行した「製造現場をガッカリさせない無線評価虎の巻」(左)と開発したSRF無線センサ(右)3.2.4 ワイヤレスネットワーク研究センター
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