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54■概要第5期中長期計画において宇宙通信システム研究室では、世界中で小型衛星、高高度プラットフォームステーション(HAPS)、ドローンなどの様々な非地上系ネットワーク(NTN)プラットフォームの開発が進む中、Beyond 5G(B5G)時代のNTNにおける地上から宇宙までをシームレスにつなぐ高度な情報通信ネットワークの実現に向けて、効率的なデータ流通を実現する衛星フレキシブルネットワーク基盤技術及び小型化・大容量化・高秘匿化を可能とする光通信の研究開発を推進している(図1)。衛星フレキシブルネットワーク基盤技術の研究開発においては、衛星・航空機・ドローン等が3次元方向に展開され、それぞれ高度や特徴が異なるため、個々の通信容量や遅延特性等を踏まえ統合的かつ効率的なデータ流通を可能とする研究開発に取り組んでいる。一方、大容量光衛星通信・フレキシブル通信・高秘匿通信基盤技術の研究開発では、小型かつ大容量通信可能で、周波数資源ひっ迫の解決として期待される光通信技術を、デジタル化によるフレキシブルな通信技術の適用により、陸上・海上・空域・地球近傍・月等あらゆる場所の多地点間をつなぐ技術の実現に向け研究開発を進める。また、安心・安全で高秘匿な無線通信システムを確立するため、宇宙における高感度・量子通信の基盤技術の研究開発等に取り組む。以上の技術を活用し、衛星等を用いた要素技術の実証実験を実施し、実用化を目指した基盤技術を確立するとともに、標準化・産学との連携を推進する。以下に、衛星フレキシブルネットワーク基盤技術と大容量光衛星通信・フレキシブル通信・高秘匿通信基盤技術の各プロジェクトについて令和3年度の成果を述べる。■令和3年度の成果1.衛星フレキシブルネットワーク基盤技術NTNと地上系の5Gも含めて海洋から宇宙までをシームレスに接続する3次元ネットワークの制御に必要となる統合制御アルゴリズムの開発に向け、複数国間、複数事業者間、NTN-地上間等をつなぐインタフェースを定義し、ネットワークアーキテクチャの検討を行い、機能確認のための衛星地上連接シミュレータの基本部分を製作した。これにより地上・衛星ユーザ双方に対してリソース割当を最適化して収容できるなどの性能を確認した。現在3GPPで標準化が進められている衛星5G技術を活用した地上・衛星ネットワークの連携の実現に向けて、欧州宇宙機関(ESA)との衛星5G/B5G共同トライアル及びNICT委託研究を統括し、衛星リンクを含む日欧間衛星5G統合制御による日欧の国際間長距離5Gネットワークの接続実験に日本で初めて成功した(図2)。一方、次世代衛星通信システムの開発では、令和5年度打上げ予定の技術試験衛星 9 号機(ETS-9)に搭載する光通信機器とビーコン送信機のプロトフライトモデルを開発した。今後これらを衛星バス担当のJAXA側へ引き渡す見Central Node5G コア欧州衛星地上NW既存衛星(Kuバンド)スカパーJSAT日欧リンク(JGN等)GWVSAT局4K映像IoTVSAT局アンテナモデムサーバ平面アンテナテストベッド5G コアテストベッド5G コア欧州日本アンテナ・モデム3次元ネットワークのアーキテクチャネットワーク制御局ゲートウェイ局静止衛星非静止衛星航空機HAPSドローン地上系・IoT・船舶*IoT: Internet of Things*HAPS: High Altitude Platform Station図1宇宙から地上までが3次元的に接続されるネットワーク図2 欧州宇宙機関(ESA)との衛星5G/B5G共同トライアル3.2.4.2宇宙通信システム研究室室長  辻 宏之ほか34名非地上系ネットワークの大容量・フレキシブル・高秘匿通信を実現

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