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553●革新的ネットワーク分野込みである。これらの結果より、今中長期で目指す世界最高レベルの10 Gbps超高速光通信や5G/B5G実証の最重要要素である衛星搭載機器の開発を大きく進展させた。地上系システムでは、衛星5G/B5Gが連接し、かつ電波の放射ビームや帯域をフレキシブルに最適に制御する衛星用地球局制御技術について、総務省委託研究を活用し衛星-地上系5Gの連接、トラヒック需要や気象による回線条件の変動予測に基づく衛星運用計画とリソース制御の方式検討及び上記技術を実装する管制系や地球局等の地上ネットワークの基本設計を完了し、ETS-9打上げ後の評価のための総合評価シナリオと試験構成案を作成した。一方、社会実装に向けた異分野連携を促進するため、スペースICT推進フォーラムを運営し、公開シンポジウム及び複数回に及ぶ検討会・交流会や衛星5G/Beyond 5G連携技術分科会及び光通信技術分科会を開催し、国内コミュニティを拡大した。また、同フォーラムが宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項として宇宙開発の重要政策に位置付けられた。国際標準化については、標準化推進室と連携し、ITU-R WP5Dの将来技術トレンド(FTT)報告書作成活動に寄与文書を入力し、NTN・衛星に関する記述を残すことに貢献した。また、アジア・太平洋電気通信共同体(APT)におけるAPT Wireless Group(AWG)において寄与文書を入力し、NICTの成果を反映させ、IoTへの衛星技術の応用の標準化報告書が完成した。さらに、NTNの相互接続に関する報告書作成の新たな作業計画を提案し承認され、新報告書に向けた検討を開始した。2.大容量光衛星通信・フレキシブル通信・高秘匿通信基盤技術NTNでの大容量光通信の実現に向け、令和2年度までに開発したHAPSや超小型衛星へ搭載可能な超小型高速光通信機器(ブレッドボードモデル)の評価を行い、実証実験に向けた飛翔体搭載用の2種類の初期モデル(プロトタイプモデル)を完成させた(図3)。また、ドローンを使った実験により、ドローンと地上間の光伝搬特性として、到来角度変動や受信電力の確率分布などの重要なチャネル特性や数値データを取得し解析を行い、ドローンのホバリングの影響に対する光精追尾技術の有効性を実証し、地上とドローン間の光回線のフェージングチャネルの時間-周波数特性を初めて解析した。これによりドローンと地上間の高速な光回線の実現及び設計に向けて成果を得た。また、これらの結果をIEEE Accessに投稿し論文が採択された(図4)。フレキシブル通信の研究開発では、3次元多層ネットワーク用のデジタルフレキシブルペイロードのシミュレータを用いた概念検討に着手した。想定する衛星軌道とアンテナ、通信機器に関する諸元をパラメータとして、全体システムのシミュレータによる検討を実施した。また、NTN向け適応型衛星光ネットワークのシステムモデルの概念検討を実施し、提案システムの評価に必要なデジタルコヒーレント方式の実験プラットフォームを試作した。本方式による評価結果を元にシステムへの適用を検討した結果、回線設計上システムが成立可能であることを示した。また、提案の通信システムに関して特許を出願した。通信光ビームの方向ずれ成分を補正する補償光学系機能について、国際宇宙ステーション搭載光通信ターミナルを使った予備実験を実施し、基本性能を確認した。さらに大気による光の波面揺らぎ(大気揺らぎ)を緩和する補償光学系とその較正ユニットの組み込み作業や、自然天体の光や人工光源等を用いて受信系における大気揺らぎ緩和の実証試験を行い、次世代衛星光通信を実現するための受信系補償光学系の確立と送信系の制御系を構築する上での設計指針を導出した。標準化・産学との連携の推進においては、国際的に光衛星通信の利活用が活発化する中、光衛星通信の国際会議IEEE ICSOS 2022をNICTがIEEEと共催し、最新の成果が発表され、コミュニティ形成を主導した。図3 飛翔体に搭載する初期モデル(プロトタイプモデル2種類)精追尾特性の結果受信電力分布の結果図4 ドローン実験による光チャネル・精追尾特性の検証3.2.4 ワイヤレスネットワーク研究センター

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