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60■概要大規模災害や障害等の様々な事象によって引き起こされる急激な変化に対しても、サービスの持続的提供を支える情報通信技術の実現に向けて、ネットワークの分断や再統合といった動的変化が生じるタフフィジカル空間においても、情報通信資源を適切に割り当て、自律的に再構成する情報通信基盤の構築技術に関する研究開発と、自然現象の急変の検知を可能とするため、環境計測センサ群からの情報を収集し、データを総合的に可視化・解析するレジリエント自然環境計測技術に関する研究開発に取り組んでいる。■令和3年度の成果タフフィジカル空間における情報通信基盤の構築に向けて、回線途絶リスクの定量化及び検出に必要なリアルタイム電波伝搬予測技術、回線が途絶する前にバックアップ回線を確立する無線アクセス技術、遍在する情報通信資源を自律分散環境下でも利用可能とする分散資源仮想化技術に関する研究開発に着手した。また、レジリエントな自然環境計測の実現に向けて、インフラサウンドセンサーデータと気象・地理データを用いた音波伝搬シミュレーション技術、映像IoT情報とインフラサウンド情報の融合可視化技術、エナジーハーベスト技術による電源自立性に配慮した高耐候・省電力IoTモジュール、上空通信の低ロス性やLPWAの多重化を活用した通信技術の研究開発に着手した。主な成果は以下のとおり。1.タフフィジカル空間情報通信基盤技術回線途絶リスクの定量化及び検出に必要なリアルタイム電波伝搬予測技術として、人の立ち入りが困難な環境における遠隔制御ロボットを用いた作業実施をユースケースに設定し、単一カメラ映像から畳みこみニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network: CNN)及び長・短期記憶(Long-Short Term Memory: LSTM)を階層的に利用することを特徴とする電波強度予測手法を新たに考案した。考案した手法が将来利用できる十分な性能を達成できる見込みを得るとともに、成果が国際会議IEEE ICC2022に採択された。また、回線が途絶する前にバックアップ回線を確立する無線アクセス技術として、通信方式によらず、低遅延性を確保しつつ通信範囲の拡張を柔軟に行うことができる、新たな非再生中継方式の研究開発に取り組み、中継先における信号品質が改善されるよう、電波伝搬環境に応じた中継器における時空間等化処理(256タップ)を低遅延で実行する手法を考案した。ケーブル接続による原理検証を行った結果、5Gダウンリンク信号を3.2マイクロ秒の処理遅延(従来の再生中継ではミリ秒オーダーの遅延)で中継し、通信方式の仕様を変更することなく受信できることを確認した。遍在する情報通信資源を自律分散環境下でも利用可能とする分散資源仮想化技術として、サービスを提供するインターネット側のクラウドとの回線が途絶する環境においても、エッジクラウド側に偏在するノードが持つ情報通信資源(計算機、メモリ、データ等)をノード間で共有し、サービスの自律的な再構成を実現する基本アー畳みこみニューラルネットワークのみ予測に用いる画像フレーム数カメラ映像の機械学習によって電波強度を予測(精度95%以上)畳みこみニューラルネットワーク+⻑短期記憶タイムスタンプ受信信号強度[dBm]図1 カメラ映像を利用した畳みこみニューラルネットワークを用いた電波伝搬予測技術3.2.5.2サステナブルICTシステム研究室室長  滝沢 賢一ほか10名通信環境や自然環境の急激な変化に対応するICTの実現をめざして

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