793●サイバーセキュリティ分野特に時間的、地理的な理由により集合演習への参加を見送っていた受講対象者も容易に受講が可能となる。新たな CYDERANGE は令和 2 年度からはじめたテスト運用を経て、令和 3 年度より CYDER 事業において本格運用を開始した。2CYDER演習内容の拡充等当センターは、実践的サイバー防御演習CYDER(CYDER:CYber Defense Exercise with Recurrence)を実施し、行政機関、重要インフラ等の情報システム担当者等が、組織のネットワーク環境を模擬した環境で実践的な防御演習を行うことができるプログラムを提供することにより、年間100回、3,000人を超える演習規模でセキュリティオペレーターを育成している。このうち当研究室では主に演習カリキュラムの策定、シナリオ開発、演習環境の構築・運用等を推進している。CYDERでは、全47都道府県に展開する初級レベルの演習(Aコース)、地方公共団体、国の行政機関、重要社会基盤事業者、民間企業等の中級レベルの演習(Bコース)に加え、令和3年度からはサイバーコロッセオ演習におけるレガシーを活用した準上級レベル(Cコース)を提供し、それぞれのコースごとに受講対象者に応じた演習シナリオを用意した。受講者の学習効果を最大化するため、コースごとの詳細な教育マニュアルを作成し、提供する演習品質の維持向上に継続的に取り組んでいる。受講者からのアンケートや受講後のヒアリングなどによる演習上の改善点の把握、インシデント事例の情報収集なども継続して行い、演習内容が受講者の業務環境に即したものになるよう努めている。また、受講者のキー入力、マウス操作、ウィンドウ操作等をパーソナルデータ保護に配慮しつつ記録するデータ収集エージェントにより収集された膨大なデータを、機械学習等の技術によって分析することで、演習による学習効果を精密に測定することが可能となる予定である。演習で使用する環境は、NICTが有する大規模計算環境「StarBED」に受講者グループごとの専用環境を構築し、受講者が実際の業務で使用するネットワーク環境を模した形で提供した。会場に集合する形式の演習では、会場が遠い、開催日に都合が付かない等、時間的・地理的要因で参加が困難な未受講の地方公共団体などの要望に応えるため、日程・場所を問わず参加できるオンライン演習も令和3年度から正式にサービスの提供を開始し、当初目標を上回る641名が受講した。さらに、デジタル庁が中央省庁向けに実施する情報システム統一研修を昨年度、一昨年度に引き続き受託して、3回・58名に対する演習を実施するなど、活動の裾野の拡大を行った。3実践サイバー演習RPCIの実施これまでCYDERで培ってきたNICTの強みである大規模環境と実機演習のノウハウを活かし、情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の更新用の講習である特定講習向けのカリキュラムとシナリオを構築した。技術に寄った講習を希望する情報処理安全確保支援士の受講者のニーズに対応する講習を提供し、受講者から高い満足度(受講者の56%が5段階評価で最上位の「大変満足」と回答)を得られた。国家資格の更新講習として着実かつ高品質な演習の提供により我が国のサイバーセキュリティ人材育成に寄与した。4SecHack365の実施平成29年度から開始された若手セキュリティイノベーター育成事業であるSecHack365では、当研究室において事業の企画と指導方針の策定等を担当するほか、当研究室のメンバーもトレーナーを務めている。令和3年度は新型コロナウィルス感染症の影響で前年度に続いてオンラインでの開催となったが、選抜された45名のトレーニーに対し、NICTが有する遠隔開発環境「NONSTOP」及び研究・開発に関する知見や人的資源という強みを活用することにより、他に類を見ない1年を通して行われる長期アイデアソン・ハッカソン、遠隔研究・開発、発表の組み合わせによる総合的能力開発プログラムを実施した。3.3.4 ナショナルサイバートレーニングセンター
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