873●ユニバーサルコミュニケーション分野て、日本国際博覧会協会と協力し、講演の字幕表示を行う実証実験に貢献した。中高生に音声翻訳APIに触れてもらうハッカソンも実施した。これらの活動により、NICTの技術移転先の作成した多言語翻訳システムの利用は、報道件数で新たに57件確認された。公共応用に関しては、警察関連で、NICTの技術を用いた警察庁のシステムや独自のオンプレの利用が進んでおり、15道府県警ではVoiceTraの利用も継続されている。消防関連では、消防研究センターと共同で開発した救急隊用多言語音声翻訳アプリ「救急ボイストラ」が47都道府県の724本部中、671本部(92.7%)で導入されている(令和4年1月1日時点)。これらにより安全な社会生活を支える応用などへの展開が更に進展した。「翻訳バンク」の活動としては、金融庁と協力しての翻訳文書の大量収集や、名古屋大学からの外国人研究者や留学生等のための事務的文書の大規模な対訳データの提供など、新たに5者から提供を受け、辞書・コーパスの提供組織は92者となった。収集した辞書等はVoiceTraの基盤となる音声翻訳エンジン・サーバで活用されたほか、金融分野での高精度の翻訳システムの技術移転を令和4年3月から開始し、3社にライセンスした。さらに、外部機関が安心して辞書・コーパスを提供できるよう、人工知能分野の研究を自ら行う国立研究開発法人として初めて、情報セキュリティマネジメントシステムに関する規格ISO/IEC27001の認証を令和4年3月に取得した。3.民間企業等への技術移転技術移転に向けて、新たに15件の特許出願及び国内移行手続きを行った。特許登録は新たに11件増えた。NICTの研究開発成果であるソフトウェアやデータベースの直接ライセンスは新たに3件(3者)増え、計49件(42者)となり、NICTの技術を活用した商用製品・サービスも新たに11件生まれた*4。既存の製品・サービスも、自治体・医療・製造業・IT関連企業をはじめ、多数の分野・業界で利用が拡大している。特に、POCKETALK Sや凸版印刷の「VoiceBiz」、コニカミノルタの「MELON」が、新型コロナウイルスワクチン接種会場や感染者の宿泊療養施設向けに提供され、活用されるなど、音声翻訳技術の利用が拡大した。4.VoiceTra及び同時通訳プロトタイプシステムの開発・改良研究開発成果の検証の場として、多言語音声翻訳アプリVoiceTraの公開・改良を行うとともに、その基盤となる音声翻訳エンジン・サーバの高速化、安定化、プログレッシブ版言語識別の導入を行った(図3)。VoiceTraのダウンロード数は、今年度に約100万件増加し、累計で約659万件、シリーズ累計では約792万件(令和4年3月末時点)となった。また、逐次音声翻訳から同時通訳への発展状況を示すものとして、現在までの技術で構成したライブ音声翻訳サーバの開発・改良を行い、東京2020大会やCEATECにおける実証実験にて活用するとともに、そのデモシステム・アプリを製作して、展示や視察で活用した(図4)。5.今後の展開引き続き、GC計画2025に基づいて同時通訳技術の研究開発を進めるとともに、政府の外国人材受入れ・共生政策や観光戦略等を踏まえた重点対応言語の充実・拡大、2025年大阪・関西万博も見据えた新たな社会ニーズや多様なユーザインターフェースに対応した同時通訳システムの社会実装の推進等にも取り組んでいく。図3 令和3年度におけるVoiceTraの進化図4 同時通訳デモシステム*1 https://www.soumu.go.jp/main_content/000285578.pdf*2 https://www.soumu.go.jp/main_content/000678485.pdf*3 https://gcp.nict.go.jp/*4 https://gcp.nict.go.jp/news/products_and_services_GCP.pdf3.4.1 先進的音声翻訳研究開発推進センター
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