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進展や、人口の爆発的増加から、交通や通信などの社会インフラの整備や、慢性的な渋滞や通信の安全性確保などが社会問題になっています。ASEAN IVOでは、移動体IoT、光ファイバー無線をはじめとする通信手法の開発とともに、通信網の安全性や産業情報の安全性の確保などの課題解決に取り組んでいます。また、新しい通信手法を用いた都市部のバス交通システムの効率化なども推進しています。これらのプロジェクトの推進により、持続可能な都市の建設及び居住環境の充実といったスマートシティの実現に貢献しています。台風、洪水、地震、津波、火山などの自然災害が社会に及ぼす影響は甚大です。ASEAN IVOでは自然災害による被害を最小限とする観点から、設立当初から地域共通課題の一つとして自然災害を取り上げ、ほぼ毎年プロジェクトを採択して課題解決に取り組んでいます。ネットワークの相互接続による減災情報の共有、被災地におけるネットワーク構築による減災、泥炭地における森林火災の監視システム、電離層データ観測による防災、移動体による情報収集及びメッシュネットワークを用いた減災システム構築、IoTによる干ばつのモニタリング及び早期警報など、自然災害のみならず、環境保護も視野に入れた取組を行っています。ASEAN IVOの成果を拡大・深化していくことにより、より大きな波及効果をもたらしていくと考えられます。共同研究連携プロジェクトで実施された泥炭地における自然災害の防止を目的とする森林火災の監視システムをベースに、更にシステムを拡張するための提案がAPT(Asia-Pacic Telecommunity)のプロジェクトに採択され、監視領域の拡大や監視地点数の増加、データ収集及び解析による早期警報システムの開発が行われていく予定です。ASEAN IVOには現在ASEAN地域の10か国の71研究組織・大学が参加しており、ASEAN地域におけるICT研究開発の代表的なプラットフォームとなりつつあります。SDGsの実現に向けて、ASEAN IVOの研究開発プラットフォームをより多くの研究者に使っていただくとともに、地域の共通課題解決に貢献できるよう、引き続き取り組んでまいります。ICTは、2015年2月、東南アジア域内の研究機関・大学等と共同でASEAN IVO(ICT Virtual Organization of ASEAN Institutes and NICT)を設立しました。ASEAN IVOは、各国に共通する社会課題の解決に向けた認識の共有及びICT分野における共同研究連携プロジェクトの形成及び推進による共通課題の解決をミッションとし、同地域に密着したオープン・イノベーション・プラットフォームを構築することを 目指しています。ASEAN IVOでは、SDGsでも目標とされている食糧、スマートシティ、耐災害等の課題についてのASEAN地域における解決を目指し、毎年フォーラムを開催して国、組織、研究者の間で課題の解決方策や今後のプロジェクトに関するアイデアを共有するとともに、公募により選ばれた共同研究連携プロジェクトなどを通じてSDGsの実現に取り組んでいます。人口が密集し、また大半が農業国である ASEAN地域は、食糧・水問題などが課題となっています。ASEAN IVOでは、IoTを用いた畑の灌かん漑がいシステム、IoTを用いたグリーンハウスにおける野菜栽培、水産養殖場のモニタリングシステム、水田の水管理用のプラットフォーム(図)、IoTを用いた都市農業システム、非侵襲型食糧安全確認システム、途上国都市部における水再利用システムといったプロジェクトを推進し、農業・漁業・水等の分野における課題解決に挑戦しています。ASEAN地域は、都市の現代化の急速なNSDGsを目指すASEAN IVOの取組江本 浩(えもと ひろし)グローバル推進部門 国際研究連携展開室室長図 各種センサーなどIoT技術を用いた水田の水管理システムの実証実験(タイ・チェンマイ地域)ASEAN IVO Secretariat:https://www.nict.go.jp/en/asean_ivo/index.htmlasean_ivo_sc_nict@ml.nict.go.jp13NICT NEWS 2022 No.3

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