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withコロナ/afterコロナにあっても、NICTの多様な個人が生き生きと活躍でき、更なる新しい働き方が生み出されてくるのではと思います。特にICTの研究開発分野では男性研究者が圧倒的に多いです。NICTでも女性研究者、女性総合職の割合は増えてきていますが、男女がバランスよくいることで、将来のICTの研究開発のバランスもまた取れて行くと考えています。我々が毎年リクルートの戦略を議論する場でも、多様性をどのように広げていくかは大きな課題となっています。一方、障害者雇用に関しては、現在、NICTにはパラリンピックでの活躍で有名な卓球選手、吉田信一さんが在籍しておられますが、働きやすい職場だとの言葉を頂いています。実際、ICTは様々な作業を支援してくれますから、障害者の方々が働く現場とは相性がいいと思います。NICT自体、リモートワークはコロナ禍以前から導入を進めており、「人々に合った職場」というものを意識しています。蟹江 理系女子の層の薄さは、皆が大事な問題だと思いながら、なお決定打を打ち出せずにいる課題ですね。高校、大学までだと女性のほうが数学や理科の成績が良いという場合も多いので、女性も働きたいと思える魅力的な職場づくりという部分も大きいと思いますし、一方で過渡期にはある程度、数値目標的なものもなお必要かと思います。障害者雇用に関しては、「障害者の皆さんが健常者と同じことができる」というのをテクノロジーが叶えてくれる可能性を強く感じる出来事がありました。私は昨年、科学技術振興機構(JST)が主催する「STI for SDGs」アワードの審査委員長を務めました。科学技術イノベーション(Science, Technology and Innovation)を用いて社会課題を解決する取組を表彰する取組ですが、ここで文部科学大臣賞を受賞したのが、「だれでもピアノ」という一本指でメロディーを弾くと、伴奏とペダルが自動で追従してくれる機能のあるピアノでした。障害者の皆さんにとって、とても魅力的なテクノロジーだと感心しました。「2030年」は決して最終のゴールではない――今後に向けて、特に留意すべき点はどこでしょうか。徳田 蟹江先生にひとつ、お聞きしたいことがあります。インターネットの発達で私たちの生活空間は物理空間だけでなくサイバー空間にも広がりましたが、一方で、サイバー空間上の公衆衛生や生活安全の問題が非常に大きくなってきています。ランサムウェアによって企業が金銭を奪われたり、COVID-19の関係ではヨーロッパで病院がサイバー攻撃の対象となったりもしています。人間社会の持続性を考えると、実はSDGsの目標の中に、サイバー空間の健全性、すなわち、サイバー・セキュリティの問題も明記されるべきだったのではと思うのですが、いかがでしょうか。蟹江 そうですね。確実に言えるのは、現在、SDGsの17の目標は決して完全な形ではないということです。今おっしゃったサイバー空間の問題もそうですし、現在進行形で人類が対処に追われているCOVID-19のようなパンデミックへの対処に関しても不十分です。また、SDGsという言葉の中には「ゴール(Goals)」という言葉があるので、そこが終わりだというイメージを持っている方も多いと思うのですが、当然ながら、そこから先の世界があるわけです。あくまで2030年は通過点であるという意識が必要だと思います。2030年に到達する4、5年前になれば、当然ながら「Next SDGs」と言えばいいのか、「その次の目標はどうしたらいいのか」という議論が始まってくると思います。その中で、さらにサイバー空間の話、パンデミックに関わる話が含まれてきてよいと思っています。――本日はありがとうございました。3NICT NEWS 2022 No.3

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