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NICT NEWS 2022 No.34FEATURESDGsテック特集ABCDEFGabcdefgABCDEFGabcdefgし、持続可能な社会に貢献します。リモートセンシング研究室のテーマのひとつに、大気の状態を可視化するレーザーセンシング技術があり、その特徴は、電波を用いるリモートセンシング技術(レーダー)では不得意な、大気中の微粒子(エアロゾル)や分子のような極めて小さな対象の観測向きだということです。エアロゾルをトレーサーにした風の観測に加え、水蒸気による吸収量の大きな波長での観測を行うことで水蒸気量の計測が可能な差分吸収ライダー*(DIAL: Dierential Absorption Lidar)に、多波長・高出力化されたレーザーを付加し、気温も計測可能なマルチパラメータDIAL(MP-DIAL)の技術開発を実施しています。MP-DIALで観測された風・水蒸気・気温の時空間分布のデータを数値気象モデルに提供することで気象予測の精度向上が期待でき、豪雨や竜巻などの突発的な大気現象や台風などによる被害の低減に貢献できます(図左)。さらに、CO2による吸収量の大きな波長での観測を追加しますと、風とCO2とエアロゾルの時空間分布について観測ができ、大気汚染や花粉飛散の状況を把握可能となり都市環境のモニタリングを行え、快適でカーボンニュートラルな街づくりに貢献できます(図中)。MP-DIALは地上付近の風の詳細な三次元観測も可能で、来るべきドローンやスカイカーの次世代の輸送・交通の安全を支えることに貢献できます(図右)。この様なレーザーセンシング技術を含む、電磁波を用いたリモートセンシング技術の研究開発を行い、防災・減災、生活の質の向上、環境の変化変動の把握に貢献できることを目指して研究しています。*差分吸収ライダー (DIAL:Dierential Absorption Lidar)気体成分の計測手法で、測定対象とする気体成分による吸収の大きな波長と小さな波長の二波長で同時にライダー観測を行うことで、気体成分の濃度分布を求めることができるライダー図 MP-DIALが切り開く未来社会電磁波研究所 ビジョンとミッション (https://rri.nict.go.jp/about/vm.html)図2.7より一部引用磁波研究所電磁波伝搬研究センターに属するリモートセンシング研究室では電磁波技術に関する研究開発を活用し、SDGsの達成に取り組んでいます。持続可能な社会には、1.信頼できる社会基盤の構築、2.環境の変化・変動の把握、3.環境の新たな変化への対応・適応、が必要です。社会基盤は、国土の保全や電力・上下水道・交通・運輸、防災・情報セキュリティまで多種多様な要素から構築され、そのどれもが高度・高機能な情報通信技術(ICT)を利用しています。この ICT を根底から支えているのが「電波利用」です。電波は目に見えないことから、社会基盤の中では、さしずめ人間にとっての「空気」のような存在です。電磁波研究所は、社会基盤にとって不可欠な「電波利用」を行うための電磁波技術の研究を継続的に実施し、長期にわたって社会を支え、持続可能な社会を実現させます。環境の変化・変動を把握する手段として、電磁波は物質中の伝搬状況や反射を観測することで遠隔(リモート)から広範囲のセンシングが可能です。リモートセンシング研究室で取り組んでいる具体例については後半に詳しく紹介します。環境の変化・変動がもたらす社会的な課題に対し、科学的理解に基づく対処方法と、それを実施可能とする社会制度がそろうことで、対応・適応することが可能になります。電磁波研究所は、電磁波の特性を活いかして、自然環境の理解を進め、科学的事実に基づいた現実的な対処技術を開発電花土 弘(はなど ひろし)電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター リモートセンシング研究室研究マネージャー環境を把握し持続可能な社会に貢献するリモートセンシング技術

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