NICT NEWS 2022 No.36FEATURESDGsテック特集ABCDEFGabcdefgABCDEFGabcdefg(海中ドローン、NTN)を受けにくい電波は、浅海域における通信手段としての利用が期待され、将来的には、海洋資源調査に留まらず、海洋生物のモニタリングや乱獲防止システムの開発などにも応用できます(図1)。次に、「人や国の不平等をなくそう」という目標に関する非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Networks)への取組をご紹介します。デジタルデバイドという言葉で示されるように情報通信技術(ICT)の利用で生じる情報格差が存在します。ITUが2021年に発表したところでは世界の29億人は一度もインターネットを利用したことがなく、うち96 %が途上国に住んでいます。アフリカ諸国では、都市部とそれ以外の地域などを起因としたデジタルデバイドが生じています。通信インフラ 面で、アフリカは有線インターネットの敷設が難しいエリアが多く、NTNを用いることで素早い敷設が可能となります。また、モバイルブロードバンドの普及率は9割以上と非常に高い一方、4Gが使えるエリアと2Gしか使えないエリアが存在します。日本では、4Gはもとより5Gの普及率も年々高まっていますが、大規模な自然災害や事故で基地局がダウンすると一瞬にしてインターネットが使えなくなってしまいます。 NTNは、衛星通信システムと地上通信システムを連携させ、Beyond 5G / 6Gを、陸上や海上から空、宇宙へと縦につないで地球上の様々な場所でインターネットに接続できるようにする技術コンセプトです。NICTはNTNを実現する基盤技術の一つとして、衛星との高速・大容量通信を可能にする非常に薄い平面アンテナを開発し、航空機に搭載して性能評価を実施しました。全地球をカバーするNTNが実現すれば、極地や砂漠、海上や離島など固定インターネット回線が敷設できない場所や大規模災害時に陸上の通信インフラが使えない場合でも、インターネットアクセスが可能になります(図2)。当研究センターは、海中電波利用技術やNTNがSDGs達成の一助となることを願い、今後も更なる研究開発を進めてまいります。試作機を用いた海中電波伝搬測定ットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センターでは、陸・海・空・宇宙の様々な環境や条件下で確実につながる無線ネットワーク、そして、様々なニーズに対応できる無線通信技術やシステムの研究開発に取り組んでいます。今回は、数ある研究プロジェクトの中からSDGsに関連する二つの技術をご紹介します。まず、「海の豊かさを守ろう」に関する海中電波利用技術です。日本は四方を海に囲まれた島国で、海洋エネルギーや鉱物といった海洋資源大国となる可能性を秘めています。水深数百mを超える海底の海洋資源は未知の部分が多く、貴重な資源を守るため、調査においては高度な技術や工夫が求められます。NICTは、海中ロボット等の運用に有効な電波通信技術や海底下探査レーダ技術の研究開発を進めています。従来、海中での電波利用は困難とされてきましたが、2015年にNICTが国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)との共同研究で開発した海中チャネルサウンダにより、深度500 mまでの電波伝搬特性測定が可能になったことで研究開発が大きく加速しました。その後は海中アンテナも開発し、海中電磁界シミュレーション手法を確立したほか、複数アンテナを用いた海中高速通信実証や、電磁波を用いた海底下センシングに関する研究を進めています。実際の海中通信実験では、周波数 1 MHz帯(帯域幅83.3 kHz)を用いて、距離1.5 mで1 Mbps程度の通信速度を達成することができました。濁度や近接物の影響ネ海底から宇宙までカバーするワイヤレス技術で地球の資源とコミュニケーションを守るネットワーク研究所 ワイヤレスネットワーク研究センター図1 開発した海中電波通信の試作機及び海中実験の様子図2 NTNのコンセプト(上)と開発した平面アンテナ(下)
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