7NICT NEWS 2022 No.3ラウド)資源をも含めて需給マッチングを図り、障害復旧を迅速化する通信資源・計算資源連携基盤技術を研究開発しています。三つ目は、これらのレジリエントなネットワークの上で機能するエッジクラウドを対象としたものです。現在の情報サービスはクラウド方式が主流で、災害時の情報共有にもクラウドが使われています。しかし、災害の場面では通信が不安定なケースが多くあり、情報共有に支障が生じます。そこで、通信が不安定な環境であっても、あたかもクラウドサービスを使い続けているかのように、各ノードが持つ計算機資源や通信資源をノード間で共有し、仮想的なエッジクラウド機能を提供し続ける自己産出型エッジクラウド技術の研究に取り組んでいます。後者の世界をレジリエントにするための ICT については、様々な環境計測データの複合解析と可視化の研究に取り組んでいます。モバイル回線でも高精細な映像を低遅延で伝送できる映像IoT技術と、超低周波音(インフラサウンド)のセンシング技術をコアに、時空間データGISプラットフォーム(NICT総合テストベッド研究開発推進センター)にデータを集約して複合解析と可視化を行うことで、火災、噴火、河川氾濫、降雪等の自然災害の検知と、災害発生位置の同定、追跡、発報などが行える地域レジリエンス情報基盤の確立を目指しています。これらの実証を東日本大震災被災地の宮城県女川町、南海トラフ地震に備える和歌山県白浜町、硫黄山(宮崎県の火山)、スリランカの地滑り地域やネパールの山岳地域で進めているほか、民間企業と共同で高知県香南市の防災情報通信・管理システムの導入を進めています。耐災害ICT研究協議会を運営して災害に強い情報通信ネットワーク導入ガイドラインを策定したり、国際電気通信連合(ITU)などに情報提供したりするなど、技術標準の確立に向けた活動も行っています。界各地で地震、津波、台風、地滑り、洪水、豪雪、猛暑、火山噴火、感染症などの脅威が発生し、人命や社会インフラが失われています。脅威に備え、影響をできるだけ抑制し、速やかに回復させる「レジリエント」な社会の実現に向けて、国連SDGsの9番でレジリエントなインフラ構築が、11番でレジリエントな都市と人間の居住地が明示的に謳うたわれています。レジリエントICT研究センターでは、「ICTで世界をレジリエントに」をキャッチフレーズに研究開発とその成果の社会利用推進に取り組んでいます(図)。研究開発のテーマは、レジリエントな性質を備えたICTと世界をレジリエントにするためのICTです。前者は三つで構成しています。一つ目は、従来の無線通信技術では通信が困難だった「タフ」な電波環境でも低遅延・高信頼な通信を提供することを目指したタフ環境適応無線アクセス技術です。5G(3GPP Release17)が規定する伝搬損失よりも損失が大きな環境のほか、電波が過密、伝搬が複雑といったタフな電波環境でも、回線が切れる前にほかの回線を確立させることで通信を提供し続けることを目指しています。二つ目は、光ネットワークのレジリエンシー向上技術です。光ネットワークの障害の予兆までも機械学習等も適用して検知し、かつ、障害を能動的に回避する技術、規格のオープン化に伴って難しくなる相互接続や統合利用を可能にしてレジリエンシーを高める相互接続基盤技術、そして通信ネットワーク資源だけではなく計算(ク世ICTで世界をレジリエントに レジリエントな性質を備えたICTとレジリエントにするためのICTネットワーク研究所レジリエントICT研究センター 図 レジリエントICT研究センターの研究開発と国土強靭化の取組
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