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“ユビキタスワイヤレス無線通信システム”を利用した安心・安全社会の実現 原田 博司
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新世代ワイヤレス研究センター特集

“ユビキタスワイヤレス無線通信システム”を利用した安心・安全社会の実現 新世代ワイヤレス研究センター ユビキタスモバイルグループ グループリーダー 原田 博司

背景

現在、ユーザーへのブロードバンド通信のみならず、無線機器間の通信、環境情報の把握等を行うために、様々な環境に無線通信機器を整備し、これらの無線機器を協調させることにより安心・安全社会を実現する“ユビキタスワイヤレス無線通信システム”が必要になっています。ユビキタスモバイルグループ(以下UMG)では、現在、この社会を実現するために様々な基礎技術について検討を行っています。

コグニティブ無線技術及び無線ネットワーク技術

ユーザーが利用できる無線システムは様々なものがあります。無線機にこの電波の利用環境を認識する機能を具備させ、この情報の使用可能な、周波数帯域、タイムスロット等の無線リソースならびに通信方式を自動的に選択させ、いつでもインターネット等のネットワークにつながる無線通信システムを実現するのがコグニティブ無線技術です。この技術は、電波の利用環境の認識法及びその結果に基づくシステムの選択法、無線機の再構築方法が実現の課題になります。そしてすでに、この技術を具備させた無線端末(図1)及び無線基地局(図2)の基礎試作に成功しています。

公共・公益分野におけるブロードバンド無線通信システム

警察、消防に代表される公共・公益分野における無線システムは、いまだ高精細な映像を送るには十分ではありません。UMGでは、VHF帯(200MHz帯)を利用して、広域(半径10km程度)の公共系ユーザーに対するブロードバンド移動通信システム(伝送レート数Mbps-数10Mbps)を実現するための検討や、実機を用いて評価を行い、標準化等へ貢献をしています。

図1●開発したコグニティブ無線端末、図2●開発したコグニティブ無線基地局

ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク

家庭内環境等においては、かならずしも基地局を介することなくユーザー同士で情報の伝送を行うワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)で通信を行いたいという要望があります。UMGでは、ミリ波帯を用いて高精細動画像等の数Gbps以上の伝送を行うスーパーブロードバンドWPANの設計を行っています。この方式はIEEE802.15.3c規格で標準方式として採用され、現在試作評価中です。また、一方で、各種メータの自動計測を、単三乾電池2個で10年程度動作可能な、低い周波数帯を利用したスーパーロングライフWPANの設計、標準化、試作及び社会インフラへの導入の検討も行っています。

次世代ITSシステム

高度道路交通システム(ITS)の分野においても安心・安全社会を実現するためにUMGでは特にアナログTVサービス終了後に利用可能な700MHz帯に着目し、高速移動体においても、途切れず、かつ、高速にネットワークを構築/再構築可能な次世代車車間通信システムの研究開発を行っています。

今後の展開

前述の4つの研究テーマに関しては、現在、試作の第一段階が終了しています。そして、NICTの中期計画に基づき、新世代ネットワークとの統合、社会インフラへの導入の検討を行っています。


Profile

原田 博司 原田 博司(はらだ ひろし)
新世代ワイヤレス研究センター ユビキタスモバイルグループ グループリーダー
大学院博士課程修了後、1995年に郵政省電波研究所(現 NICT)入所。以降、ディジタル信号処理技術を利用したソフトウェア無線技術、コグニティブ無線技術、コグニティブ無線ネットワーク技術の研究開発、標準化活動に従事。特にIEEE Standard Coordination Committee 41 (SCC41)議長、IEEE1900.4 副議長等としてコグニティブ無線技術の標準化を世界的に牽引。博士(工学)。

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