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藤井 智史 | ||||||||
CREO(Coral Reef Environ-ments in Okinawa)プロジェクトは、沖縄のサンゴ礁環境を様々な分野から多面的・総合的に調査研究する事を目的に今年4月にスタートした共同研究プロジェクトである。参加メンバーの専門分野は、沿岸環境学、海岸工学、水産学、海洋生物学、リモートセンシング、沿岸海洋学と多岐に渡っている。これは、研究対象であるサンゴ礁物理・生態環境システムが陸域や外洋の影響を受けやすい開放系システムであり、観測スケールも数10kmの周辺広域スケールから数kmのサンゴ礁スケール、10mオーダのサンゴ群体スケールまで重層的な広がりをもつことから、サンゴ礁の研究は内容も方法も総合的にならざるを得ない側面を持っているためである。 琉球諸島は、沖合い500mから2kmまでリーフに取り囲まれたサンゴ礁の島々です。沖縄の方言で「イノー」と呼ばれるリーフの内側は、色とりどりの様々な形をしたサンゴで覆われ、そこにはサンゴに負けないくらいカラフルな魚達や小生物が集まってきます。生物資源増産の場として沿岸漁業にとって大変重要な場所であり、島に生きる人々のまさに生活の場となっています。そして昨今は、世界有数のダイビングポイントをめざしてやってくるダイバー達に感動を与える場にもなっています。 そのサンゴが昨夏大きなダメージを受けた。ほぼ全世界で同時発生した白化現象である。原因としてエルニーニョの影響などが上げられているが、直接的には海水温上昇によるサンゴ体内にある褐虫藻の減少である。 沖縄近海も例外ではなく、かなりのサンゴが白化し死滅していった。この現象は冬までには終息したが、その後沖縄本島周辺は白化からの回復がすこぶる鈍い。それに対して、すぐそばの慶良間諸島やチービシでは早い回復を見せている。この回復速度の違い、赤土汚染等の環境との関係などを調べていく中、サンゴの卵や幼生の移動や広がりの過程を探る必要性が出てきた。 初夏の深夜、サンゴは一斉に産卵し、海の色が変わるほどあちこちから卵が放出される光景は神秘的といわれています。この日は大潮や小潮にあたり、潮汐との関係が深い事は分かっていますが、異なる群体が同時に産卵するメカニズム、海上で生殖した後どのようにして沈降し着床するのかといった事がまだ明らかにされていません。なによりも、どこに流れていくかという事さえ詳しく調べられた事はなかったのです。
漂流ブイは、慶良間諸島から放流され、当初は潮流により往復運動の軌跡を示していたが、慶良間諸島北側に出た後は黒潮分岐流と考えられる北東〜東向きの流れに乗って移流した。この動きは、同時刻に短波海洋レーダで観測された広域の表層流動場と一致している(図1)。ブイはその後回収されたが、短波海洋レーダの連続観測の結果などから、サンゴの幼生達はその3〜4日後に沖縄本島西海岸に漂着する計算になる。 この結果は、「チービシ、慶良間諸島が沖縄本島のサンゴの供給源である」という従来からの仮説を裏付けることとなった。同時にこのことは、本島のサンゴ回復のためにもチービシ、慶良間諸島の環境保全が重要であることを表している。
特に、短波海洋レーダでは表層流しか測れない事が海流測器としての限界と言われていますが、サンゴ幼生は表層流そのもので2次元的に移流するわけで、まさにうってつけの測器なわけです。短波海洋レーダの開発では、様々な応用を求めて全国の研究者と共同で既に20ヶ所以上での実験観測を実施し、民間企業への技術移転の成果も出つつあるところなのですが、沖縄で行なってきた研究開発の成果がなによりも沖縄で活かせる事をたいへんうれしく思います。 CREO99観測では、漂流ブイや短波海洋レーダによる観測の他に、広域水温モニタリングネットワークの構築や多地点同時観測によるリーフ内外の水環境計測を実施した。 これらの速報的成果は、10月に開催された日本サンゴ礁学会で報告し、他の研究者からも注目されている。また、沖縄県内紙やTVのローカルニュースでも報道された。 今後、観測結果の詳細解析を続けると共に、遺伝子レベルの調査の実施や海外の研究者との連携を深め、最低3年程度は研究を続ける予定である。 来年も観測を実施したいと考えているのですが、サミット開催直前なので、海岸で“異様な”アンテナを展開したり、海に“あやしい”ブイを流したりすると、別な意味で新聞をにぎわせたりするかな、と思案しているところです。 CREOのホームページは、 http://www.cv.titech.ac.jp/~nada-lab/creo.html (沖縄電波観測所長)
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![]() ![]() ![]() ![]() 日仏がんセンターコンファレンス 報告 ![]() ![]() ![]() ![]() 第四研究チーム 金澤亜美氏 |