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大竹竜人(おおたけ たつひと) - 総合企画部 知財・産学連携室 室長

2005年1月18日に情報通信研究機構の知的財産戦略をまとめた「独立行政法人情報通信研究機構知的財産ポリシー」 (以下知財ポリシー)が制定されました。

知財ポリシーは、NICTの内外、すなわち、成果を生み出す研究者やその成果の利用者や連携相手である国民、企業等に対し、 「今後NICTは、特許など知的財産の確保及びその社会への利用還元により、研究成果を社会に普及させていく方法を採用していく」 ことを宣言したものです。このため、名称は「知的財産ポリシー」ですが、知財の創造・保護だけでなく、 その活用部分も取り込み、一般的に言われる技術移転ポリシーも含んだものになっています。

このポリシーは、2002年2月に小泉首相が施政方針演説の中で 「研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、 我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします」と発言したことに端を発しています(表1)。

表1 日本が目指す知財立国への歩み

2002年3月 知的財産戦略会議 発足
7月 知的財産戦略大綱 決定
2003年3月 知的財産基本法 施行
知的財産戦略本部 設置
7月 知的財産推進計画 決定
2004年5月 知的財産推進計画2004 決定
2005年6月 知的財産推進計画2005 決定予定

この中で「知的財産戦略会議」を立ち上げて、人材育成、研究者へのインセンティブ付与、 技術移転機関(TLO)の整備やベンチャー支援といった知財の創造基盤整備が強力に推進され、 「知的財産立国」形成に向けて現在「知的財産推進計画2005」の取りまとめ作業が行われています。 NICTにおいては、この推進計画に基づき、NICTに相応しい知財ポリシーの策定を行いました。

さて、知財ポリシーの中身ですが、 (1)「基本的考え方」では、自らの研究成果を社会に還元するための考えを内外に示し、 (2)「知的財産の範囲及び帰属」では、特許、ノウハウ、プログラムといった扱う知財を定義するともに、その権利帰属について定めています。 (3)「組織・体制の整備」では、窓口の明確・一本化、TLOの活用、講習会等の啓蒙活動を企画する研究支援について示しました。 (4)「特許取得方策」は、実用化をイメージした研究開発や良いアイデアの早期出願を心がけることを研究者の責務としています。 (5)「TLOによる技術移転方策」は、NICTの研究成果シーズを企業等に紹介することや、企業のニーズを収集することを謳っています。 (6)「NICTによる技術移転支援」は、研究者や企業からの情報整理・提供等の技術移転活動支援について示しました。 (7)「知的財産の実施許諾」は、企業に向けたNICTの実施許諾方針を示すとともに、徴収した実施料を研究費として再活用することを示しています。 (8)「発明者へのインセンティブ」は、技術移転活動を研究者の評価に反映するよう定めています。 (9)「情報管理」は、産学連携を推進することで、多くの情報を企業とやり取りするため、守秘義務の徹底、 (10)「その他」では、NICT研究成果を活用したベンチャー支援と侵害対応について示しています。

NICTでは、ここ数年毎年200件あまりの特許出願をしています。 最近では、これらの特許出願をもとにしたライセンス実績も増加しています。 今後は、知財・産学連携室のみならずNICT研究者一丸となって知財ポリシーを実践することにより、 NICTの知財活用を一層活発化させ、社会貢献につなげたいと願っています。