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NICTで活躍する女性研究者 vol.1

NICTでは約80名の女性研究者や女性職員が活躍しています。 NICTニュースでは、シリーズで女性研究者にスポットを当て、お話を伺います。

青木 美奈(あおき みな)さん - 情報通信部門 インターネットアプリケーショングループ 主任研究員

1989年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程了。同年郵政省通信総合研究所(現在NICT )に入所。以来、眼球運動を 中心とした視覚情報処理の実験的研究に従事。趣味は楽器演奏。2男1女の母。


ユビキタス社会に役立つ「視線」の研究

情報通信分野で研究するきっかけと、現在行っている研究内容について紹介してください。

青木 私は医学も含めて人間全体、特に"人間の情報処理"に興味があって、大学では工学系に進んで"音声認識"に ついて研究を行っていました。修士課程を修了し、平成元年に当時の郵政省通信総合研究所に研究員として採用されました。 当初は"画像圧縮"の研究を行っていましたが、現在は、人間の目の動きを計りながら、"視線と意図の関係"の研究を行って います。これをユビキタス社会において、意図した所へ人間が視線を送っただけで、人間がこうしたいという意思を、 インターフェイスが理解するということにつなげたいと思っています。

情報通信の分野で女性が活躍するために

女性研究者のあり方について、現在の職場環境も含め感じていることにはありますか。

青木 最近やっと情報工学の分野へ女性が進出してきましたが、そもそも今まで大学において工学系の分野で女性の数が、 相対的に少なかったのです。また、それは日本のもともとの教育のあり方が原因だったのだと思います。もっとも、私は 理科系が好きだったので、それらを意識したことはありませんでしたけれど。研究職ということで、研究内容が評価される ので特別男女の差は感じませんが、NICTで女性研究者の比率が少ないこと、過去の採用が非常に少なかったことによって 女性管理職が少ないのは問題だと思います。しかしNICTでも女性の採用が多くなってきたのはうれしいことですね。

NICTで働く女性研究員における"横のつながり"はあるのですか。

青木 NICTは電波研究所や通信総合研究所の時代から、全国各地に支所がありましたが、女性研究者同士の"横のつながり"的な ものはありませんでした。そこで私は、女性研究者のメーリングリストを昨年の11月に立ち上げました。NICTの女性研究員は、 正規研究員、任期付研究員、専攻研究員(非常勤研究員)などさまざまですが、身分に関係なくまとめたものです。 現在女性研究者の半数近くが入っています。メーリングリストを立ち上げた効果には、例えば、会計のシステムに 旧姓利用ができなかったため、不便だという意見が寄せられたので、担当者と交渉して利用できるようにしたことがあります。 メールでは日常の雑談から職場改善意見まで、さまざまな意見交換が行われています。

研究者と母の両立に欠かせない社会的理解

研究者と母の役割、またはそれらを両立させるのは大変なご苦労があるのでは。

青木 私の夫もNICTの研究者なので、研究の重要性は理解してくれていますし、研究者と母の両立には協力的といいますか、 共同的です。女性研究者は、配偶者に研究生活に理解をしてくれる人を選ぶためか、かなり高い割合で同じ研究者を伴侶と する場合が多いようです。もちろんその他の職業の場合もあるでしょうから、そのような場合でも、女性研究者を支えられる ような社会ができればいいなぁと思います。子育ては、どうしても女性の方に負担がかかることが考えられるので、もう少し、 社会全体で育児に理解が必要だと思います。

その点でNICTは育児休暇をとりやすいですし、フレックスタイムということもあって柔軟に時間が取れ、育児にも十分な時間 をかけることができ、働きやすい環境だと思います。出産後、通常は自宅周辺の保育施設に子どもを預けて復職しますが、 定員があるため、復職を希望する時期に必ずしもすぐに預けられるわけではありませんので、職場内に託児所を併設する ことも必要になってくるかも知れませんね。男性職員にも子育てをしている方もいるわけで、職場環境全体で子どものいる 人への理解が深まってくれればいいなぁと思います。

母と研究者という二つの顔をもつことは、一見大変なように見えますが、一方の仕事をすることで、もう一方のストレスを 解消することができるので、それほど大変なこととは思っていません。