好感度(商用調査で大勢のモニターから収集した好感度の集計値)の認知ラベル推定において、脳情報処理シミュレータの推定精度(図中の紫色)は深層ニューラルネットの推定精度(図中のオレンジ)を上回る結果となった。また興味深い点として、同じ認知ラベルの推定を、計測した脳活動の脳解読で行ったところ、こちらも深層ニューラルネットより高い推定精度を示した(図中の水色)。一方、脳解読が深層ニューラルネットより低い推定精度を示す認知ラベルに対しては、脳情報処理シミュレータも深層ニューラルネットに比べて同等以下の精度を示した。つまり、脳情報処理シミュレータが深層ニューラルネットよりも高い推定精度を示すのは、脳解読が高い性能を発揮するような、脳情報が有効な推定問題であるといえる。この結果は、我々の技術が脳情報処理を適切にシミュレートしている傍証となる。以上の結果は、脳情報処理シミュレータが日常生活における人間の様々な認知内容を、既存の機械学習によるパターン認識手法より高い精度で推定し得ることを示唆している。そのような技術の実社会における応用価値は高く、実際に我々のグループは、株式会社NTTデータと共同で事業化した映像コンテンツの感性評価サービスにおいても、この脳情報処理シミュレータの導入に成功している(参考:https://nttdata-neuroai.com/)。5.3脳情報処理における個人差のシミュレーション上記の研究では、複数名で構築した脳情報処理シミュレータの平均的な推定結果を用いて検証を行った。ただし、個人の脳情報処理シミュレータを使って、個人ごとに認知ラベルを推定することもできる。もし、その推定が脳情報処理の個人差を反映するのであれば、脳情報処理シミュレータの技術的価値は更に高められる。そこで我々のグループは、脳情報処理シミュレータに図10 シミュレータが個人差を反映する推定の例図9 シミュレータの個人差反映に関する検証方法173-1 日常的な認知に関わる脳情報処理のモデル化と人工脳への応用
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