CiNetは「脳情報通信融合研究センター」の略称です。脳と情報通信を融合する研究とは一体どういう研究なのでしょうか。17世紀フランスの哲人デカルトは脳を詳細に観察した上で『人の「こころ」は「脳」に宿る』と喝破しました。脳にはどうやって「こころ」が宿るのでしょうか。他方、情報通信の理論を作り上げた20世紀の天才シャノンは「情報工学には意味は不要だ」と述べました。意味のない情報なんて、私には意味がわかりません。でも、意味を捨ててメッセージの「数」だけに注目したおかげで、電信、電話、コンピュータからスマホに至るまで八はち面めん六ろっ臂ぴの活躍を見せる情報通信の基礎が築かれたのでした。実は、「情報」の意味を回復するのは私たちの脳に鎮座している「こころ」なのです。私たちはシャノンが捨てた情報の意味を、脳がどのように回復するのか、を明らかにします。そして、デカルトが立てた究極の問「機械としての脳に、どのようにして心が宿るのか」に回答を与えます。見て聞いて感じて思いやることができる「こころ」を持つ人工の脳、CiNet Brainを作ることが私たちの究極の目標です。本特集号では、2018年から2022年までの研究成果に焦点を当てて、研究者自身によって解説が行われています。CiNet Brain確立に向けた私共の歩みを感じていただくとともに、大阪から発信する「おもろい研究」への期待を持っていただければと思います。北澤 茂 (きたざわ しげる)未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター研究センター長医学博士神経科学【受賞歴】2018年 第27回中山賞大賞 中山人間科学振興財団2003年 Excellent Paper Award, Neuro-science Research1999年 第13回塚原仲晃記念賞 ブレインサイエンス振興財団1 緒言 「おもろい研究」from Osaka1Introduction北澤 茂KITAZAWA Shigeru11 緒言 「おもろい研究」from Osaka
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