spm/)やFSL(https://fsl.fmrib.ox.ac.uk/fsl/fslwiki/FSL)は、数分から十数分の時間を有する(図3)。重要なことは、分離処理が速いだけでなく脳組織の分離精度が従来法と比較して遜色なく、領域によっては高い分離精度を示している。図4に解析法による分離精度の比較を示している。T1強調画像の灰白質と白質のコントラストを基準にすると、我々の手法は基底核などの脳深部の領域での精度は劣る(図4、白矢印)。これは、脳中心部領域に信号の不均一が存在するために、複数のコントラストでは完全に分離できていない。従来法では、信号の不均一が存在しても事前確率分布を利用することで精度よく分離できている。一方、大脳皮質では明らかに本手法の境界線がコントラストに沿って描かれている(図4、黄矢印)。従来法は、灰白質と白質境界部分に曖昧な領域がみられる(図4、黄矢印)。おそらく、T1強調画像のコントラストと事前確率分布だけでは細かな組織の境界を決定できないためである。脳血管分離法の開発[4]3テスラMR装置のT1強調画像と比較すると、7テスラMR装置のT1強調画像では血管の高信号がみられる(図1左)。血管の信号増加は磁場強度の増加に伴う縦緩和時間の延長によるものである。低磁場MR装置のT1強調画像では血管信号は抑制されているので、他組織と誤認されることはなく脳組織を分離する上で問題は生じない。一方、血管信号が他組織と同程度になった場合、他組織と誤認される恐れがある。7テスラMR装置において撮像条件を変更することによって血管信号を低減することは可能であるが、変更に伴ったT1強調画像コントラストの変化により、脳組織分離に問題が生じる可能性がある。そこで、T1強調画像における血管情報を取り除く方法を検討した。脳血管分離においても脳組織分離と同様、MP2RAGE法の複数のコントラスト画像を用いて、Frangi filterと単純な加減算から血管を分離することに成功した(図5)[4]。一般的に、MRIによる血管の描出はTime-of-flight法という血管専用撮像法が利用される。Time-of-flight法は、血管以外の組織の信号を低減し、血管信号だけを強調する撮像法である。つまり、その画像には構造情報がなく脳領域を同定することはできない。したがって、Time-of-flight法で撮像するときは構造画像を合わせて撮像する必要があり、それだけ撮像時間が長くなる。また、構造画像と血管情報を重ね合わせる必要があり、撮像間の被験者や患者の動きの影響をうける。我々の脳血管分離法を用いれば、MP2RAGE法による撮像だけで脳構造と血管情報を同時に取得できるので(図6左上)、撮像時間が短縮される。また、撮像間の動きに影響されることなく、構造画像に血管を重ね合わせることができる(図6)。ただし、我々の脳血管分離法には欠点もある。Time-of-flight法は血管撮像に最適化されているため、より細かな血管の抽出も可能である。MP2RAGE法の現状の撮像条件は、脳組織のコントラストを高めるように設定しているため、血管信号を最大化するように最適化されていない。そのため、血流速度が大きい太い血管が主に分離されている。今後、脳組織及び血管のコントラストを最大化できる撮像条件の最適化を行うことで、脳組織の分離精度を下げることなく、細い血管の分離も可能とする。超高磁場MRIの構造画像を用いた 脳容量解析の問題点 7テスラの磁場強度を超えるMR装置はSNRが高く、高解像の構造画像を取得できるため、精度の高い脳容45図5 脳血管分離法図6 脳血管分離法の実例735-1 超高磁場MR構造画像に対する脳組織分離解析法
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