各処理において扱ったチャンネル数を上付き数字で示す(306、360)。各出力データに対してスペクトル密度を計算し(FFTサンプル長=16384点、ハニング窓、重複時間点=8192、加算回数=7)、センサの種類、また、周波数帯域ごと(DC–0.97、δ:1–3、θ:4–7、α:8–13、β:14–29、γ:60±12を除く30–79、high frequency oscillation:120±6と240±3を除く80–200 Hz)に雑音低減率(Shielding Factor:SF)を20*log10(Bprc/Braw) として計算した。Bprcは信号処理後の出力値、Brawは計測値である。図6に、IAS非駆動時のsystem noiseデータのマグネトメータ(n=102)による平均スペクトル(A)と周波数帯域ごとの最大値及び平均値(B)を例示する。最大の雑音低減率として、oxtSSS360によるSF=4.5 dBが実現しており、δ以上の周波数帯域の平均スペクトル密度は3.29 fT/√Hzから0.556 fT/√Hzまで低減した。これは、MEG信号のフロアレベルとしては非常に優秀な結果である。また、各信号処理手法の特性を反映する主な効果として、OTPは高周波数帯域(主にセンサの熱雑音)、SSS及びtSSSは低周波数帯域(主に環境磁気雑音)、また、縦型センサは全体的なフロアレベル(信号対雑音空間の分離精度向上)の低減に有効であることが観察された。一方で、SSS及びtSSSの適応により、フロアレベルの最大値または平均値が(かえって)上昇するという問題が生じた(xSSS306、xtSSS306)。SSSの信号再構築によるアーチファクト(特に、時間的に急峻な変化を持つ雑音成分)の空間的拡散やゆがみは既知の問題であるが、subject noiseを除くsystem noiseとdevice noiseデータでは、OTP及び縦型センサの相乗効果により回避できることが分かった(oxSSS360、oxtSSS360)。IASに関しては、大きな外来雑音成分がない計測環境であるため、明確な効果は観察図6 信号処理手法の検証80 情報通信研究機構研究報告 Vol.68 No.1 (2022)5 脳機能計測の最先端を進むための計測技術の研究開発
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