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染色体の構造変化に関わる新たなタンパク質を発見

〜 生命の多様性をもたらす遺伝情報組み換えシステムの一端を明らかに 〜

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2009年11月3日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、生物が遺伝情報を子孫に受け渡すメカニズムを情報通信技術として捉え、この原理を利活用するための研究を行っています。細胞核において、遺伝情報を保ち、複製し、組み換えて、分配する役目を担う染色体は、減数分裂の際に、この役目を果たすため特殊な構造をとります。

  今回、この構造をつくり出す因子を新たに発見し、染色体が核内で特殊な構造をとるメカニズムを明らかにしました。これは生命の多様性をもたらす遺伝情報の組み換えという機能の一端を明らかにするものです。

  なお、この成果は国際誌ジャーナル・オブ・セル・バイオロジーの2009年11月2日号に掲載されます。

背景

遺伝情報を組み換え、コピーして精子や卵子などの生殖細胞に分配するために生殖細胞が行う減数分裂では、壊れやすい遺伝情報を安全・確実に組み換え、娘細胞(分裂後の細胞)に送り届けるために、染色体は一時的に特殊な構造になります。この構造変化は、酵母やテトラヒメナのような単細胞微生物からヒトのような高等動物の細胞まで共通して見られ、遺伝情報の組み換えを効率的に行い、生命の多様性を生むために極めて重要であると考えられています。そして、この生命の多様性創出の現場としての染色体が構造変化を起こすメカニズムの解明が久しく求められていました。

今回の成果

減数分裂において、細胞の核内に存在する染色体の末端(テロメア )が核膜上の1点に集合する特殊な構造(ブーケ配置)をとり、遺伝情報の組み換えが行われます。今回、NICTはこの構造を形成する因子としてテロメアを核膜につなぎ止める働きがあるタンパク質(Bqt4)とBqt4を酵素による分解から守る働きがあるタンパク質(Bqt3)を新たに発見しました。

NICTがこれまでの研究で発見したBqt1及びBqt2というタンパク質に加え、これらの新しいタンパク質を発見したことは、核内における染色体の構造変化メカニズムの解明につながるもので、減数分裂における細胞核構造の変化の意義を解き明かす上で大きな進展となります。

この成果は国際誌ジャーナル・オブ・セル・バイオロジーの2009年11月2日号に掲載されます。 なお、本成果は国立大学法人大阪大学との融合研究の一環として得られたものです。

今後の展開

NICTは、今回の発見をもとに、ほぼすべての動植物に共通して見られる染色体の核内構造変化メカニズムが持つ生物学的意義を解き明かし、生物が持つ優れた特徴を取り入れた、柔軟でロバストな情報通信システムへの応用につなげていきます。





未来ICT研究センター バイオICTグループ
近重 裕次

Tel.078-969-2244
Fax.078-969-2249
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独立行政法人 情報通信研究機構 
総合企画部 広報室

Tel.042-327-6923
Fax.042-327-7587
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