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脳活動計測による3D映像評価装置を開発

広視野3D映像が脳に与える臨場感・安全性の定量的評価に向けて

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2010年11月1日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)けいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターは、現在、技術開発が進む3D映像が脳に与える臨場感・安全性を定量的に評価する手法を確立するために、今回、広視野(水平視野角100度)の3D映像を高磁場のMRI装置内の被験者に提示できる装置を開発し、広視野3D映像が脳に与える効果を計測できることを確認しました。

今後、この装置を用いて3D映像の心理的効果と脳活動の関係を詳細に分析していくことで、3D映像が脳に与える好影響や悪影響のより客観的・定量的な評価が可能になると考えます。なお、本装置は、平成21年度総務省委託研究「眼鏡の要らない3次元映像技術の研究開発」により開発しました。

背景

現在、3Dの映画・テレビなど3D映像技術の開発・普及が進んでいます。しかしながら、3D映像が生体に与える好影響・悪影響に関しては十分には明らかにされていません。NICTけいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターでは、よりリアルで自然な超臨場感コミュニケーションを実現するために、3D 映像が脳に与える臨場感や安全性の客観的・定量的な評価手法の開発を進めています。

今回の成果

大画面の3D映像が生体に与える好影響(立体感・没入感・質感等)・悪影響(違和感・疲労感・映像酔い等)を脳活動で評価する手法を確立するためには、まず広視野の3D映像を脳活動計測装置内に提示可能にし、信頼性の高い脳活動データを取得できることを検証する必要があります。そのため、今回、広視野の 3D映像を観察した時の脳活動をfMRI(機能的磁気共鳴撮像法)により計測できる3D映像評価装置を開発しました。(補足資料 図1

従来のfMRI脳活動計測用の映像提示装置は、被験者の頭部周囲の空間が大変狭いため、水平視野角20度程度の映像しか提示できませんでしたが、今回、特殊な超広角接眼レンズを開発して、(没入感が強く得られる)水平視野角100度に至る広視野の3D映像(両眼視差映像)の提示が可能になりました。

また、MRIは高磁場(3テスラ※)を発生するため、液晶ディスプレイ等の磁性体をMRI装置内に設置することは困難です。そこで遠方の磁気シールドボックス内のプロジェクタから右眼・左眼用の映像を眼前のスクリーンに投影し、被験者が、脳撮像画像にノイズを与えない超広角接眼レンズを通して広視野3D映像を観察することができるようにしました。

※ テスラは磁場の強さを表す単位で、3テスラは地磁気の約7万倍になる。

なお、本装置は高解像度(フルハイビジョン画質)の3D映像を提示することができ、脳活動と共に広視野3D映像を観察時の両眼の眼球運動(視線方向・瞳孔径・輻輳)を測定することも可能です。今回、この装置を用いた脳活動計測実験を実施したところ、広視野3D映像が脳に与える効果を確実に捉えることができました。(補足資料 図2

今後の展望

今後、この評価装置を活用して、3D映像の心理的効果と脳活動の関係を詳細に分析し、3D映像が脳に与える好影響・悪影響をより客観的・定量的に評価する手法の確立を目指していきます。

本評価装置の一部や脳活動計測結果は、2010年11月4日(木)~6日(土)にけいはんな学研都市(京都府)において開催される「けいはんな情報通信研究フェア 2010」にて展示・発表いたします。

また、個別にご取材を希望される方は、広報室までご連絡下さい。

補足資料 【今回開発した広視野3D映像評価装置の概要】
図1: 脳活動に基づく広視野3D映像評価装置(左上:頭部周辺の拡大図)
図1: 脳活動に基づく広視野3D映像評価装置(左上:頭部周辺の拡大図)

MRI装置は頭部周辺に高磁場を発生させるため、遠方に設置した磁気シールドボックス内のプロジェクタ2台から右眼・左眼用の映像を超望遠レンズにより頭部上部のミラーに投影する。ミラーで反射させた映像は眼前のスクリーンに投影され、超広角接眼レンズにより水平視野角100度の3D映像を生成する。眼球運動は、頭部奥に設置した超望遠カメラで(ミラーを介して)撮像した眼球の映像をもとに計算機で解析する。(MRI装置は、今回の開発に含まれない。)

【広視野3D映像が脳に与える効果】
図2: fMRI脳活動計測により捉えた広視野3D映像が脳に与える効果
図2: fMRI脳活動計測により捉えた広視野3D映像が脳に与える効果

左図は、3D映像(ランダムドットの動画)の水平視野角が25度、50度、100度と増加するにつれて、後頭野の視覚皮質がより広範囲に賦活する様子を示している。右図は、広視野2D映像と比較して広視野3D映像を観察した時に、後頭野から頭頂野にかけての脳領野がより強く賦活する様子を示している。(脳画像は脳の溝を見やすくするため画像処理により膨張させている。赤い部分は、条件間の脳の賦活の差分を示している。また、V1、V2、V3、V3A、 V3B、V7は後頭野の視覚皮質の詳細な区分、IPSは頭頂野の主要な溝を意味している。)

<本件に関する 問い合わせ先>
ユニバーサルメディア研究センター超臨場感システムグループ
安藤広志、和田充史、坂野雄一

Tel:0774-95-2641
Fax:0774-95-2647
E-mail:

<報道関係問い合わせ先>
総合企画部広報室
報道担当 廣田 幸子

Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail: