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UWB測位システムとスマートフォンによる「視覚障がい者歩行支援システム」の技術開発

~屋内の位置情報をリアルタイムで測定/特定し、目標地点まで音声で案内~

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2012年7月2日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)と富士通株式会社(以下「富士通」、代表取締役社長:山本 正已)は共同で、「UWB測位システム」と「スマートフォン」を組み合わせた「視覚障がい者歩行支援システム」の技術を開発しました。このシステムは、GPSを利用できない屋内でも位置情報をリアルタイムに特定し、目的の場所への方向や距離を音声で案内し、視覚障がい者の歩行を支援します

今回開発した「視覚障がい者歩行支援システム」によって、視覚障がい者の不便が解消され、今後の歩行支援に関する研究開発が大きく前進することが期待されます。

なお、7月5日(木)、6日(金)にパシフィコ横浜で開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2012」で、本システムについてデモ展示を行います。

開発の背景

現在、視覚障がい者向けにGPS機能を備えた携帯端末を用いて目的地までの道を音声案内するシステムの開発が進められています。

しかし、GPSは屋内環境では利用できないという欠点があるため、NICTと富士通は屋内測位で高い精度を発揮している「UWB測位システム」が、数十センチの精度かつリアルタイムな情報が求められる視覚障がい者の移動支援に適する方式と考え、今回の研究開発を試みました。

今回の成果
視覚障がい者歩行支援システム

今回開発した「視覚障がい者歩行支援システム」は、「Impulse Radio型UWB (IR-UWB)技術」の測距特性を利用し、屋内エリアにインフラとして配置した複数の「基地局」と、同じエリア内にいる利用者又は目標物が用いる「移動局」、そして、システム全体を制御する「制御端末」で構成されています。

まず、「基地局」が、同エリア内の2つの「移動局」(利用者と目標地点)の基地局からの距離を30センチメートル以下の誤差で測定し、「制御端末」がその位置情報をリアルタイムに特定します。次に、位置特定の結果が、利用者が所持する「移動局」に送られます。その情報は、Bluetooth経由でスマートフォンに転送され、専用アプリケーション(地図ソフト)を用いて、利用者の現在位置と目標地点の位置を表示します。そして、目標地点に到達するまでの歩行方向と歩行距離が、音声で案内されます。利用者の移動に伴い、位置情報や地図上の位置表示・音声案内の内容は、随時更新されます。


※使用したIR-UWBは、国内制度で認められている7.25~10.25GHzを使用し、TELEC認証を受けています。
※スマートフォンはNTTドコモ「docomo NEXT series ARROWS X LTE F-05D」(富士通製)、専用アプリケーションはAndroid 2.3を対象として開発しました。
※Androidは、Google Inc.の商標です。 その他、記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標又は登録商標です。

各組織の主な役割分担

本システムにおいて、NICTはUWB測位システムを開発し、富士通はスマートフォンで動作する専用アプリケーションの開発を担当しました。

今後の展望

今後、進路上の障害物を検出するセンサーなどと連携したシステムを構築することによって、視覚障がい者向けの支援分野の技術開発を更に進めていきます。また、この高精度の測位技術は、視覚障がい者だけでなく、一般の方の移動時の安全性向上や、屋内案内サービスへの応用も期待できます。例えば、自治体庁舎内や病院での案内・誘導といった、安心・安全の向上や、博物館・美術館・図書館・ショッピングモールなどでは、場所に応じたコンテンツを提供することで、楽しさや快適さにつながる総合的なサポートサービスへの応用などが考えられます。

補足資料

図1 システム構成図と利用イメージ
図1 システム構成図と利用イメージ

「基地局」が配置されているエリアにある「移動局」に対して、通信範囲にあるすべての「基地局」との間で自動的に測距が開始される。

2個以上の「基地局」から測距結果が得られれば、「制御端末」において、これらの測距結果(2~6個)に基づいて、「移動局」の現在位置を算出する。

位置特定の結果を座標値という形でユーザが所持する「移動端末」に通知し、さらに、Bluetooth経由でユーザが所持する「スマートフォン」に転送される。

「スマートフォン」において、専用のアプリケーションソフトを使用して、「移動局」から送られて来る測位データを基に、現在位置を画面表示する。さらに、「スマートフォン」で、別の「移動局」を置いている目的地を指定することが可能であり、目的地の位置を同じUWBの測位データを用いて画面上に表示するとともに、現在位置から目的位置までの方向と距離情報を音声で読み上げる。

図2 スマートフォンの表示画面例
図2 スマートフォンの表示画面例

用語 解説

UWB(Ultra Wide Band)

UWB(超広帯域)とは、非常に広い周波数帯域幅にわたって電力を拡散させ、低い電力密度をもって通信及び測距測位を行う無線技術。電力を抑え周波数を重畳して利用することにより、ほかの無線システムとの共存が図れる技術として注目されている。一般に、UWBに割り当てられている周波数帯は2つあり、それぞれ、UWBローバンド(3.1~4.8 GHz、ただし、国内では3.4~4.8 GHz)とUWBハイバンド(6.0~10.6 GHz、ただし、国内では 7.25~10.25 GHz)と呼ばれている。

Impulse Radio型UWB(IR-UWB)技術

Impulse Radio型UWB(IR-UWB)技術は、高い精度で距離測定を行えることが知られている。

UWBには、IR (Impulse Radio)方式とMulti Band OFDM(MB-OFDM)方式がある。IR-UWB方式は、時間軸上のナノ秒オーダーの非常に短いパルスを用いることによって実現されている。このナノ秒オーダーのパルスは、精確な時間情報を提供しているため、パルスを計測することによって、誤差が30cm以下の距離測定が可能である。測定回数を増やすなどの処理を施すことによって、測距精度を更に高めることができる。

スマートフォン専用アプリケーション

UWB測位システムの移動局とスマートフォンとのBluetooth接続を管理し、移動局から送られて来る測位データを基に現在位置を画面表示し、現在位置の情報を音声で読み上げる専用のアプリケーションソフト。

TELEC認証

UWBを利用するために、電波法上で、UWBシステムから放射される無線電波の電力密度の制限や使用可能の周波数帯域及び最小データレートなどについて規定されている。電波法上のすべての規定が満たされるUWBシステムのみ、無免許で使用することが認められる。TELECは、無線システムが電波法の規定を満たすかどうかの検証と認定を行う機関で、TELECの認証を得たUWBシステムは無免許で使用することができる。

本件に関する 問い合わせ先

独立行政法人 情報通信研究機構
ワイヤレスネットワーク研究所
ディペンダブルワイヤレス研究室

李 還幇、三浦 龍
Tel: 046-847-5432  
E-mail:
E-mail:

富士通株式会社 
総合デザインセンター

吉本 浩二、蔦谷 邦夫
Tel: 044-433-5605  
E-mail:
E-mail:

広報 問い合わせ先

独立行政法人 情報通信研究機構
広報部

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
E-mail:

富士通株式会社 
広報IR室

Tel: 03-6252-2175