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宮城県女川町で運用開始! 被災自治体での災害に強い無線ネットワークの実証実験

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2014年3月19日
ポイント

    • 宮城県女川町にてNICTが開発した災害に強い無線メッシュネットワークの実証実験が開始
    • 被災自治体の視点からの、運用上のシステムの問題点の把握や平時における利活用方策を検討
    • ICTによる災害に強いまちづくりと地域復興のモデルケースの構築に期待

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)は、東日本大震災の被災地であり復興が進む宮城県牡鹿郡女川町(町長: 須田 善明)との間で覚書を取り交わし、NICTが開発した災害時でも通信の途切れにくい耐災害ワイヤレスメッシュネットワークを構築し、このたび実証実験を開始しました。
この無線メッシュネットワークは、拠点間を網の目状(メッシュ状)に無線で接続するため、経路の一部が遮断されても通信機能が維持できる災害に強い優れた特徴を持っています。NICTと女川町は協力して、被災自治体のユーザ視点での意見を基に、本無線システムの実証実験を行うほか、平時における町の広報活動などへの活用や復興のための活用方策について検討を進め、災害に強いワイヤレス通信技術や地域の復興に寄与する情報通信技術の研究開発を行います。

背景

東日本大震災において情報通信が途絶した教訓を受け、NICTでは産学官の連携体制の下、無線の強みを生かした災害に強いネットワークの研究開発を行っています。その一環として、通信の集中が起きにくい構造を持ち、無線局の損傷やネットワークの切断があっても機能を最大限維持する特徴を備えた、耐災害ワイヤレスメッシュネットワークの技術実証のためのテストベッドを東北大学(仙台市)内に整備し、性能確認のための実証実験を行っています。
この度、被災自治体の一つである女川町の理解と協力を得て、NICTは女川町との情報通信分野における研究協力に関する覚書を締結し、実フィールドにおける実証試験等の実施に至ったものです。

今回の成果
無線ネットワーク機器収納ボックス
無線ネットワーク機器収納ボックス

今回、利用者が多いと想定される女川町役場仮設庁舎、地域医療センター、つながる図書館、冷凍冷蔵施設(4拠点)の間を無線ネットワークで結び、高台にある地域医療センター(海抜16m)のカメラで女川湾や国道、復興工事現場の映像を取得して、女川役場仮設庁舎等で常時確認できるモニタリングシステムを構築しました。
これまでは、海から離れた丘陵地にある女川町役場仮設庁舎からは、女川湾の状況や降雨時の国道の冠水状況等を直接確認することができず、監視者を派遣する必要がありました。今回の無線ネットワークシステムの設置により、町役場仮設庁舎からの状況把握が可能になりました。

今後の展望

今回、設置した無線ネットワークシステムを自治体でお使いいただくことで、被災地自治体のユーザの視点で、システム利用時の課題や提供が望まれるアプリケーションなどについてのご意見をいただき、今後の研究開発に反映させます。また、女川湾や国道冠水状況等の遠隔確認のほかに、町の広報情報の提供や住民向けアナウンスなどへの活用、復興後の町の商店街や観光等に活用できるネットワークシステムの実現を目指します。NICTと女川町は、本実証実験を通じて、地域復興のためのICTのモデルケースを作るべく協力して参ります。



補足資料

システムの全体像
図1 システムの設置場所
図1 システムの設置場所

女川町役場仮設庁舎、地域医療センター、つながる図書館、冷凍冷蔵施設(4拠点)の間を、無線局免許が不要な無線ネットワークで結び、自治体が利用する独自のネットワーク(自営系ネットワーク)として活用する。今後、町民や事業者向けの情報提供や町の広報などで多くの利用者が見込まれることから、町民が集う図書館や港湾産業の中核にある冷凍冷蔵施設等に拠点を設置した。

図2 メッシュネットワークの利用イメージ
図2 メッシュネットワークの利用イメージ

図3 地域医療センターに付けられたシステム
図3 地域医療センターに付けられたシステム

地域医療センターは、女川湾や復興が進む町の中心部を見下ろす高台にあり、無線通信環境に優れる。アンテナやカメラ、フェンスに取り付けられた無線ネットワーク機器収納ボックス(点線内)が、今回のシステム(一部)である。

図4 カメラ映像の実例(女川湾の映像)
図4 カメラ映像の実例(女川湾の映像)

女川町役場仮設庁舎で確認できるカメラ映像の実例



用語 解説

耐災害ワイヤレスメッシュネットワーク

NICTが開発した強い耐災害性を持つワイヤレスネットワーク。東北大学キャンパス内に実験用テストベッドとして設置されており、現在も性能確認のための運用を続けている。複数の固定型の無線局を網の目状(メッシュ状)に無線で接続し、一部の無線局が災害等により損傷を受けても、他の生き残った無線局が相互に協力し、全体として通信機能を最大限維持することができる
各無線局がデータを一時蓄積する機能や無線局間でデータを共有する機能を有することで、インターネットへの接続が途絶した場合でも、無線メッシュネットワーク内で通信の相手先を見つけ、通信を確保することができる。また、利用者端末間で安否確認や情報共有、位置情報配信などを行うことができる。

女川町について

女川町は、宮城県の東、牡鹿半島基部に位置し、奥州三大霊場の一つである『霊島 金華山』を中心とした『南三陸金華山国定公園』地域に指定されている。
北上山地と太平洋が交わる風光明媚なリアス式海岸は天然の良港を形成し、カキやホタテ・ホヤ・銀鮭などの養殖業が盛んで、世界三大漁場の一つである金華山沖漁場が近いことから、魚市場には年間を通じて暖流・寒流の豊富な魚種が数多く水揚げされている。特に、女川港は古くから天然の良港として知られ、慶長16年(1611年)のイスパニア使節による三陸海岸の探検測量時の文献に『石浜』と『浦宿』の地名が記されていて、明治18年(1885年)の英国ハミルトン将軍率いる東洋艦隊の初入港の際にも、軍艦の停泊に最適として世界中に紹介されている。
近年では、新鮮な魚介類を活用した観光産業を中心に、多くの皆様に足を運んでいただいていたが、平成23年3月11日発生の東日本大震災により、町中心部は壊滅的な被害を受けた。これまで以上の水産都市の実現へ向け、『女川町』は総力戦で1日も早い復興を目指して懸命な努力を続けている。



本件に関する問い合わせ先

NICT 耐災害ICT研究センター
ワイヤレスメッシュネットワーク研究室

浜口 清
Tel: 022-713-7515  Fax: 022-713-7543 
E-mail:

広報

NICT 広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923 
Fax: 042-327-7587
E-mail:

女川町 企画課 企画調整担当

三浦 将
Tel: 0225-54-3131(内線224) 
Fax: 0225-53-5483 
E-mail: