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宅内無線ネットワーク用Wi-SUN認証規格に準拠した無線機の実装に成功

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2015年1月30日

独立行政法人 情報通信研究機構

ポイント

    • 宅内無線ネットワークに不可欠な複数家電対応・中継機能付き無線機を世界で初めて実装
    • IEEE 802標準規格とWi-SUN認証規格に準拠する無線機の社会展開を促進
    • 電力消費の見える化や家電等の動作制御によって、エネルギー消費の削減が可能に

NICTは、Wi-SUNアライアンスが策定するHAN(Home Area Network)用Wi-SUNプロファイルの無線機の実装に世界で初めて成功しました。今般、Wi-SUNアライアンスは、HEMS(Home Energy Management System)コントローラと家電等を接続するIEEE 802.15.4g国際標準規格準拠の920 MHz帯無線を使用したHANと呼ばれる宅内無線ネットワークのWi-SUN認証規格を策定しました。NICTは、この Wi-SUN認証規格に準拠した無線機を開発・実装し、単一HEMSコントローラに対する複数家電の接続及びHEMSコントローラと家電間で無線の中継を介する接続において、動作実証することに成功しました。

背景

家庭内で、各家電における消費電力の監視や監視結果に基づく利用形態の制御により、エネルギーの消費を削減し、環境に優しい社会形成に寄与するHEMS(下図参照)の概念が注目されています。HEMSは、HEMSコントローラ、スマートメータ及び家電等により構成され、各機器間の上位層通信プロトコルとしてECHONET Liteが策定されています。一方で、Wi-SUNアライアンスでは、当該ECHONET Liteをサポートするために、ECHONET Liteにおいて規定されない下位層通信プロトコルとして、IEEE 802.15.4g国際標準規格準拠の920 MHz帯無線を用いるWi-SUNプロファイルの策定を進めてきました。これまでに、「Bルート」と呼ばれる「HEMSコントローラとスマートメータ間の区間」については、Wi-SUNプロファイルが策定され、既に複数の電力会社により採用されています。さらに、「HAN」と呼ばれる「HEMSコントローラと各家電間の区間」についてのWi-SUNプロファイルも2015年1月29日に策定されました。

今回の成果
HEMSの概要
HEMSの概要

今回開発した無線機は、HAN用のWi-SUNプロファイルを実装しています。HEMSコントローラとスマートメータの1対1通信を想定するBルートに対し、HANでは、単一のHEMSコントローラに対して2台以上の家電が接続する1対多通信となり、さらに、距離等によりHEMSコントローラと家電間の通信状況が劣悪な場合には、無線の中継が必要となり得ることが特徴です。本実装では、Wi-SUNプロファイルの規定に準じ、複数家電に対しての認証をそれぞれ適切に行うと同時に、適切な経路を設定した上で、MAC層における制御情報の交換を利用して中継通信を実現しています。

今後の展望

Wi-SUNアライアンスによる支援の下、IEEE 802国際標準規格に基づき、NICTの技術提案が反映された無線機の国内外での社会展開を促進し、ICTを利用した安全安心社会の実現を目指します。



補足資料

今回開発した無線機の概要

< 想定システムの概要 >
図1に、今回の成果に関して想定するHEMSの概要を示します。家庭内の各家電とスマートメータは、HEMSコントローラによって無線通信を介して集中的に制御されます。今回実装に成功したWi-SUNプロファイルは、図1におけるHANに関するもので、ここでは、HEMSコントローラに対する複数家電の接続や、さらには、中継器を介在させた無線の中継による接続形態も想定しています。

図1 想定するHEMSの概要
図1 想定するHEMSの概要



図2に、今回実装に成功したHAN用Wi-SUNプロファイルを示します。Bルート用のプロファイルに比べて、複数家電に対する認証プロトコルが行われる点と中継伝送がサポートされている点が拡張されています。

図2 HAN用Wi-SUNプロファイル
図2 HAN用Wi-SUNプロファイル



< 今回開発した無線機を用いた動作実証について >
図3に、本実装を用いた動作実証例を示します。HEMSコントローラは、ノートPCとHEMSコントローラ側無線機によって構成されています。また、無線機能付家電として、それぞれスマートタップ(無線機能付タップ)付ドライヤと無線機を取り付けたLED照明を用いています。さらに、別の無線機を中継器として適用しています。図3におけるHAN無線リンクとして表されるように、HEMSコントローラに対して2個の家電が接続され、そのうち、LED照明側の家電については中継器を経由して動作することとしました。ドライヤ側からは、スマートタップからの消費電力量がHEMSコントローラに対して定期的に通知され、一方、HEMSコントローラ上の操作により、LED照明が制御される動作実証を行いました。

図3 動作実証例
図3 動作実証例



用語解説

Wi-SUNアライアンス、Wi-SUNプロファイル

2012年1月24日に設立された、IEEE 802.15.4g規格準拠無線機の世界初の規格認証団体。認証は、想定アプリケーションに応じてそれぞれ物理層、MAC層、必要ならばインタフェースに関する機能仕様を規定し、認証の基準とすることで行われる。このようなアプリケーションに応じて規定される機能仕様を、当アプリケーションに対するWi-SUNプロファイルと称している。

HEMS(Home Energy Management System)

家庭内のエネルギー消費形態を管理するためのシステム概念。通信機能を有する家電により電力消費状況の監視や制御を行うとともに、家庭全体での電力消費量をスマートメータを介して適切に電力会社に通知することが可能である。家庭内の各機器の制御は、HEMSコントローラと呼ばれる機器により集中的に行われることが想定されている。

IEEE 802.15.4g

スマートメータ用無線等に代表される無線システムであるスマートユーティリティネットワーク(SUN; Smart Utility Networks)を実現するための物理層標準規格。米国の電気・電子技術の学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)内で、LAN等の規格策定を行っているIEEE 802委員会によって、低消費電力・低伝送速度のサービスを提供するためのIEEE 802.15.4標準規格を変更することで策定された。
IEEE 802委員会ホームページ: http://www.ieee802.org/
IEEE 802.15WGホームページ(関連規格策定グループへのリンクあり):
http://www.ieee802.org/15/

ECHONET Lite

ECHONETコンソーシアムにより策定されたHEMS用標準通信プロトコル。ISO規格及びIEC規格として国際標準化されており、2012年2月24日、経済産業省により、スマートメータや家庭内機器とHEMSコントローラをつなぐ日本国内での標準プロトコルとして推奨された。OSI参照モデルにおける5層以上のプロトコルスタックとして規定されているため、これをサポートするためのWi-SUNプロファイルは、1層~4層のスタックとして規定されている。

本件に関する 問い合わせ先

ワイヤレスネットワーク研究所
スマートワイヤレス研究室

児島 史秀、矢野 博之
Tel: 046-847-5084, 046-847-5051
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広報

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
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