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単一の量子ドット光ゲインチップによる50GHz狭間隔2波長同時レーザ発振を達成

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2015年3月10日

独立行政法人 情報通信研究機構
光伸光学工業株式会社

ポイント

    • 光から高周波電波への変換に利用可能な世界初の狭間隔2波長同時発振レーザ光源を開発
    • デスクトップ型単独装置で光周波数間隔(50GHzまで)の2波長レーザを安定して発振
    • 2波長レーザを活用したシステムを低コストでシンプルに構築することが可能

光伸光学工業株式会社(光伸光学工業、代表取締役社長: 渡部 武光)は、NICT光ネットワーク研究所が開発したサブナノ層間分離技術等の結晶成長技術を使い、量子ドットゲインチップを用いた狭間隔2波長同時発振レーザ光源を開発しました。2波長同時発振レーザ光源は、発振波長間隔を用いた光から高周波電波(ミリ波やテラヘルツ波等)への変換に利用することが可能です。今回の成果により、テーブルトップ型量子ドット波長可変レーザ光源で単独装置として、2波長レーザを安定して発振できることから、2波長レーザを用いた応用研究開発が大きく加速されるとともに、光ファイバ無線(Radio over Fiber)など高周波電波による通信の実用化が推進されます。
なお、本成果は、NICT高度通信・放送研究開発委託研究「Tバンド、Oバンドによる大波長空間利用技術の開発」(平成25年度~平成29年度)によるものです。

背景

電気駆動でミリ波やテラヘルツ波等の高周波電波を光変調器により発生させるには困難が伴うため、光から電波変換の技術が期待されています。この成果は、光周波数の異なる2つのレーザ光の差周波から、その周波数間隔の電波を発生させる技術です。従来、この方法には、波長の異なる複数台の単一発振レーザ装置を組み合わせたシステムが構成されてきました。しかし、この構成を用いるとシステム全体が複雑で大型化する問題があります。また、2台のレーザ間の波長間隔を決めるためには、基準になるレーザ光を固定し、もう一方のレーザの波長をモニタしながら波長間隔を微調整する必要があり、希望する光周波数間隔の設定が困難となっていました。

今回の成果
図1 今回開発した量子ドットレーザ光源
図1 今回開発した量子ドットレーザ光源
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光伸光学工業は、NICTの委託研究において、量子ドットゲインチップを使用したT-Oバンドの波長可変レーザ光源の開発を行っています。
この委託研究における成果の一つとして、2波長同時発振レーザ光源(図1参照)を開発し、世界初となる狭い光周波数間隔(50GHzまで)の2波長同時発振に成功しました(図2参照)。
単一の光ゲインチップで2波長同時発振するためには、均一な離散的発振特性をもつ量子ドット光ゲインチップが必要です。NICT光ネットワーク研究所が開発したサブナノ層間分離技術等の結晶成長技術を用いた量子ドット光ゲインチップは、高品質な量子ドット構造(図3参照)が形成され、要求を満たしています。
今回の成果は、NICTの技術を用いた量子ドット光ゲインチップによる多波長同時発振技術をベースとして、光伸光学工業の外部共振器構成技術と高精度な光フィルタリング技術を組み合わせることで実現しました。
このレーザにより、光周波数の異なる2波長を単独光ゲインチップの光源装置から発振させることが可能となり、2波長レーザを活用したシステムが低コストでシンプルに構築することが可能となります。

今後の展望

2波長レーザの発振間隔からその光周波数間隔の電波を発生させることが可能であり、ミリ波帯の電波発生源としての利用が可能となります。さらに、光フィルタリングに使用するフィルタを変更することで、2波長間隔を50GHzから数THzまで設定できる可能性があり、光から高周波電波変換等の様々なアプリケーションへの展開が期待されます。
今後は、2波長同時発振の波長特性向上及び安定化を行い、2~3年後の製品化を目指して開発を進めていきます。
なお、本成果について、第62回 応用物理学会春季学術講演会(2015年3月11日(水)~3月14日(土))にて発表予定です。

図2  2波長同時発振時のレーザスペクトラム
図2 2波長同時発振時のレーザスペクトラム
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図3  NICTが開発した量子ドット構造
図3 NICTが開発した量子ドット構造
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本件に関する問い合わせ先

光伸光学工業株式会社 アプライド製品部

友松 泰則
Tel: 0463-74-1555
E-mail:

NICT光ネットワーク研究所 光通信基盤研究室

山本、赤羽、川西
Tel: 042-327-6982
E-mail:

広報

NICT広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923 Fax: 042-327-7587
E-mail: