

新世代ネットワーク研究開発ターゲット
「地球にやさしいネットワーク」
「地球にやさしいネットワーク」とは
新世代ネットワークは、今後数十年にわたって社会を支え得るインフラであることが求められます。そのために、その時々のニーズ・コスト・環境条件などに適合した、持続的に運用が可能な技術により構成されることが求められます。新世代ネットワーク技術戦略におけるネットワークターゲットの1つである「地球にやさしいネットワーク」では、地球の容量限界に起因する様々な制約に対して解決法を見いだし、ネットワークと社会の持続的発展を可能とすることを目的にしています。
エネルギー問題~グリーンネットワーク~
ICTの利活用により発生される通信トラヒック量は近年増加の一途をたどっており、15年後には現在比の1,000~10万倍程度に達すると予測されています。既に日本ではICTが使用する電力消費量が総量比で約5.8%をも占めており、このまま推移すれば近い将来深刻な電力量増となることは避けられません。近年のエネルギー問題(温室効果ガス排出量削減)の国際的動向を考慮すれば、このICTのエネルギー問題に対する抜本的解決策は急務と言えます。
そこで、新世代ネットワークでは情報転送のエネルギー効率を1,000倍以上に飛躍的に向上させ、消費電力量の増加を伴わずに増大するトラヒックの低減・収容を可能とすることを目指しています。このような飛躍的な省エネルギー化は、現在主に取り組まれているルータなど通信装置単体の改良だけで達成することは非常に困難であることが研究により予測されており、アーキテクチャの再設計を含めたネットワーク/ICT総体での抜本的な対応が必要と考えられます。フォトニックネットワークに代表される省電力通信方式、装置構成法、デバイス技術、待機時のスリープ技術等と、常時通信が前提であるIP、TCPなど現在のインターネットを構成する主要プロトコルの革新により実現する単位情報を超低消費電力で通信する技術。また、ネットワークとサーバ(クラウド)、アプライアンス等を連携したエネルギー最適化情報・コンテンツ流通方式により情報流通を効率化し、発生トラヒック量を低減する技術などがその中心となると考えられます。

周波数資源問題
無線通信の利用者数の急増と通信速度の高速化、コンテンツの大容量化によって無線周波数資源は限界に達しつつあり、枯渇に瀕しています。さらに、ユビキタス通信やセンサーネットワークなど新しい無線利用が萌芽しつつあることも考えると、新世代ネットワークでは有限である無線周波数の利用に関し、増大が予想される無線トラヒックを収容し得る技術の研究開発が必須となります。
そこで、新世代ネットワークではエンドユーザにおける無線通信キャパシティを現状の100倍以上に高めることを目標としており、そのために必要となる種々の無線利用技術が開発されています。例えば、(1)まだ十分に活用されていない高周波帯(ミリ波帯~テラヘルツ帯)を利活用するための技術開発による使用可能な周波数の拡大、(2)コグニティブ無線技術やMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術など、周波数の利用効率(例えば、1Hz当たり、単位面積当たりの情報伝送量[bit/Hz/km2])の増大、(3)高速移動中のユーザのトラヒックは携帯電話網のようなモビリティ対応ネットワークに、移動しないユーザの通信はユーザの利便性を低下させずにできるだけ有線ネットワークに収容するような、用途に応じた周波数リソースの動的再配分技術、等の実現に向け研究が進められています。
Profile

- 村上 誉(むらかみ ほまれ)
- 新世代ワイヤレス研究センター
ユビキタスモバイルグループ
主任研究員 - 総合企画部
新世代ネットワーク研究開発戦略推進室
主任研究員

- 川村 龍太郎(かわむら りゅうたろう)
- 総合企画部
新世代ネットワーク研究開発戦略推進室
専門研究員