CRLで開発した航空機搭載雲レーダ(SPIDER : Special Polarimetric Ice Detection and Explication Radar)は、偏波、ドップラーを測定できる多機能レーダである。一方向だけでなく、広い範囲の観測を可能とするため、送受信機を収納しているユニットとアンテナは一体となって回転出来るようになっている。写真1は航空機(ガルフストリームII)に搭載された時の外観であるが、アンテナは航空機の進行方向に直交して最大+40度〜−90度(直下方向が0度)走査することが可能である。
SPIDERの観測データ例を図2、図3に示す。図2は平成11年6月に航空機実験で取得した航空機直下方向の観測データであり、図3は平成12年2月にSPIDERを地上に設置し、天頂方向を観測した時のデータである。縦軸はいずれも高度であり、横軸は図2では水平距離、図3では時間である。レーダエコーは距離分解能150m毎に得られており、エコー強度は色分けして表示されている。これらの観測データから、SPIDERにより雲の垂直分布構造が明瞭に捉えられていることが分かる。但し、レーダエコー強度は雲粒の組成(水または氷)および粒径分布に依存するため、SPIDERの観測量から雲の微物理量が直ちに導かれるわけではない。図3の地上観測では、気象研究所の協力を得て雲粒の直接サンプリングを実施し、またマイクロ波放射計やライダーによる観測も同時に実施した。これらのデータを比較照合することにより、雲レーダの性能評価とともにレーダエコー強度から雲の微物理量(雲水量、粒径など)を導出するアルゴリズムの高精度化についての研究を現在行っている。