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日欧広域IPv6実験の開始
久保田 文人
 はじめに 

 去る1月31日、当所5号館1階ロビーにおいて日欧4地点を接続したディジタルビデオ(DV)会議を開催しました。これは本年11月までの10か月間、通信総合研究所とロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)との共同研究を軸とする日欧広帯域IPv6ネットワーク実験のキックオフとして開催したものです。接続地点は、日本側は当所と、別府にて開催中の情報ネットワーキング国際会議(ICOIN-15)会場、欧州側はUCLと、マドリード郊外で開催中のグローバルIPv6サミット会場でした。

講演風景
▲東京・小金井の通信総合研究所からの講演風景
 

 広帯域IPv6ネットワーク実験とは?

 インターネットが電話網に代わりグローバルな情報通信インフラになるとの期待が高まっています。といっても今のままで良いのではなく、スピード、品質、安全性、信頼性など様々な課題があり「次世代インターネット」は当所の研究開発目標の1つです。その要素技術であるIPv6は1992年に開発が始まりましたが実用化は進んでいません。ところが日本ではWIDEプロジェクトやメーカーが開発を進めIPv6先進国となっています。ここにきて欧州を中心にIMT-2000へのIPサービス導入と関連して急速に導入機運が高まってきました。
当所では研究開発用ギガビットネットワーク(JGN)やアジア太平洋情報通信基盤(APII)テストベッド等を生かして国内外の機関と共同で広域IPv6ネットワーク実験を展開しようとしています。この度、欧州のインターネット研究の中心の1つであるUCLとの共同実験に着手したのはグローバルな実験計画の一環です。
 

 実験計画 

 当所はこれまで通信・放送機構GENESISプロジェクトと連携して仏テレコム研究所(CNET)、欧州核物理研究機構(CERN)、グスタフルーシー研究所(IGR)等と共同で1997年から99年まで日欧高速衛星通信実験(JEG)を実施しました。これは2Mbps衛星通信回線により日欧の研究機関を直接接続した最初の実験プロジェクトでした。(当誌No.284参照)
 昨年から広帯域のインターネット実験を進めるために地上回線に移行しました。今回の実験では最大40Mbpsの回線を利用します。国内機関への足回りにはJGN等を、欧州内は英テレコム研究所の実験網、汎欧州研究開発ネットワーク(TEN-155)等を利用します。(図参照)
 今回の実験ではIPv6の新たな機能の可能性を追求するとともに、広帯域の応用技術の開発が期待されます。当所はWIDE、UCL、仏国立情報処理研究所(INRIA)等IPv6研究で中心的な機関と共同し、広帯域マルチキャスト、QoS経路制御、高精密時刻同期などの技術開発実験を実施します。その共同作業を円滑に進めるためDV会議による討論会を定期開催しようと計画中です。

次世代ネットワーク構成図
▲次世代ネットワーク(IPv6)技術に関する日欧広帯域IPv6ネットワーク共同実験の構成図


 終わりに 

 多地点会議では各サイトの意識を合わせることが大変難しいものです。議長の東京大学江崎浩助教授の臨機応変な進行のもと、それぞれのサイトから総務省田中征治技術総括審議官、IPv6フォーラム ラディド会長、欧州委員会情報社会総局カンポラルゴ部長、UCLカースタイン教授らの講演がスムーズに行われました。各サイトに待機し、ぎりぎりまで調整に携わった関係者の努力に敬意を表し、また4月に新発足する次世代インターネットグループの成果に大いに期待するものです。
(通信システム部 統合通信網研究室長)
 

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