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航空機搭載映像レーダ

浦塚 清峰 (うらつか せいほ) - 電磁波計測部門 環境データシステムグループ グループリーダー

平成16年10月23日夕刻、新潟県中越地方は最大で震度7の強い地震に見舞われました。震源は、新潟県山古志村を中心と する地域で、その後続いた余震の規模も大きく、多くの家屋倒壊、土砂崩壊といった物的被害のほか、死者40名を越える 痛ましい災害となりました。

NICTでは、災害時の状況把握や地球環境の現状把握を目的として、昼夜、天候に関係なく地表面を高い解像度で観測できる 航空機搭載映像レーダ開発に取り組んでいます。その応用の実証を目的として研究公募により広く外部の研究者とも共同で 応用課題の研究を推進してきたところです。

この航空機搭載映像レーダ(詳細は CRLニュース331号を参照してください)は、後述するように、12,000mもの高い高度からでも1.5mの解像度で天候に 左右されること無く昼夜を問わず地上を観測することができます。そのため、2000年の有珠山および三宅島の相次ぐ 火山災害においては、悪天と噴火にはばまれた地表面や火口状態を定期的に観測するなど現状の災害に対して、 防災対策諸機関をはじめ一般に公開することにより、その推移の把握と災害の状況把握に貢献しました。

NICTでは、今回の地震発生に伴う被害の様子が甚大なものであるとの報道等から、すばやく観測の準備を行い、地震発生 から3日後の26日に被災地域の観測を行い、速やかに観測画像を関係諸機関・報道機関・一般に公開しました。 図1は、新潟県中越地震の最初の震源付近を観測したものです。図2および図3はその拡大図で、これらの図の中で土砂崩壊の 様子や、脱線した新幹線の様子などを見ることができます。これらの画像は、下記のウェブサイトで公開しているほか、 国の災害対策本部をはじめとする関係機関に提供しました。復興対策の一助として貢献できることを願っています。

ただし、画像から実際の被害状況を詳細に判読するためには、まだその判読のための技術が未熟であるため、土木や防災の 専門家を交えた研究をさらに進めたいと考えています。この緊急観測のデータは、災害状況の把握と復旧作業に資することの 目的には自由に活用していただきたいという主旨で、データを以下のウェブサイトにて公開しています。

新潟県中越地震の被災地の皆様には心よりお見舞い申しあげますとともに、本災害の早期の収束と一日も早い復興を心より お祈り申し上げます。

越地震被災地の航空機SAR映像
https://www2.nict.go.jp/dk/c215/PI-SAR/niigata_jishin.html