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USBメモリがあなたのパソコンの鍵に変身

澤田 史武(さわだ ふみたけ) - 総合企画部 知財・産学連携室 主幹

NICT知財・産学連携室は、研究成果の管理・知財化・活用、他機関との連携支援や研究者に対する様々な支援を行っています。 今回は、その中から自らの研究成果の活用にスポットを当てて紹介します。

自らの研究成果活用を支援する制度として、プレベンチャー制度があります。プレベンチャー制度(詳細は 本ニュース2002年11月号 参照)は、NICTにおける自らの研究成果をベースにした企業化構想を支援するための制度で、2002年に第1回目の プレベンチャー制度がスタートしました。この第1回目に応募した梅野主任研究員の提案は採択(カオス暗号チップの開発) され、1年半の起業準備を経た後、2003年8月にはカオス暗号技術を武器に、株式会社カオスウェア(以下カオス)が設立 されました。カオスの自社製品としては、ファイル暗号化ソフト「暗号化工房」(VSC-P2P)、カオス暗号組み込みツール (VSC-SDKキット)などがあり、VSC-SDKキットを使った商品は、国内大手のレンタルビデオ店やこども写真館などに導入されて います。

今回ファイル暗号化ソフト「暗号化工房」をさらに進化させた『CIPHERON Initiative 』(サイファロン)が、10月18日より カオスのWebサイトで無償ダウンロード出来るようになりましたので、このサイファロンについて紹介します。

サイファロンの最大の特徴は、自動フォルダ暗号機能を持たせたことです。この機能は、汎用のUSBメモリを抜き差しする だけで、PC内の予め指定したフォルダ内のファイルを暗号・復号化することが可能です(図1)。これまでは、暗号化や復号化を 行う毎にマウス等の操作を必要としていましたが、サイファロンはマウス等の操作をUSB メモリの抜き差しという単純な動作に 変えることにより、PCの使い方に習熟していない人でも、金庫に鍵をかけるようにPC のファイルを簡単に暗号化することが できます。また、暗号・復号化する作業を意識することなく、情報のセキュリティーを保てることから、まさにUSBメモリが PCの鍵のように機能します(図2 )。もちろん普通にファイルを保存することも可能です。

NICT発ベンチャー第1号であるカオスは、現在までのところ順調にビジネスを展開しており、商品開発フェーズをほぼ終え、 これから本格的な販売拡大をしていく段階に移行したと言えます。ベンチャーは、立ち上げも大変ですが、継続・拡大する ことの方がさらに大変です。今後も知財・産学連携室は、NICT発ベンチャーを支援していきます。