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研究者紹介

非常に小さなエネルギーではたらく光デバイスをめざして 神戸研究所未来ICT研究センター 栗原一嘉

神戸研究所未来ICT研究センター ナノICTグループ 専攻研究員 栗原一嘉今までとはレベルが違うほどの小エネルギー光スイッチが可能に

「ここでは10年20年先の情報通信に関係するような研究をしています」と語る栗原一嘉専攻研究員が今進めているのは、「表面プラズモン」に関する基礎研究です。表面プラズモンというのは金属表面を伝わる光のことで、光の波長よりも小さな金属の先端部では弱い光でも強い電場を発生させるため、非常に小さなエネルギーでもスイッチングを行うことが可能になります。「これを利用すると、今までとはレベルが違うほどエネルギー消費量が少ない光スイッチをつくることができるかもしれません」。こうしたアイデアは、最近欧米で特に注目されているといいます。

批判的なコメントが多かったが結果的に高評価を得られた

これまで、こうした現象を数式で表現することはできませんでしたが、栗原専攻研究員は新しい方法でこの問題を解きました。その論文はIOP(Institute of Physics英国物理学会)の学術ジャーナルに掲載されましたが、論文審査の段階ではレフリーから批判的なコメントが多かったといいます。「電磁気学では偏微分方程式を解くときに変数分離という方法を使いますが、私の提案した方法は不完全な変数分離で解くという、これまであまり使われていなかった方法だったからです」。結果的には、この論文は高く評価され、IOPが出版している60以上のジャーナルの中から注目すべき論文をセレクトして掲載する『IOPセレクト』にも掲載されました。

栗原専攻研究員がNICTに赴任したのは4年前。当初は中性原子の冷却を研究していましたが、もともとバイオセンサーの研究で表面プラズモンについて基礎的知識も持っていたこともあり、2年半ほど前から現在の研究を始めました。「無理して解いているというよりも、解けるけれども誰も手を付けていなかった問題がたまたま自分のところに来たという感じです。純粋な物理学をずっとやっていたわけではないので、新しい発想で解くことができました」。IOPセレクトに選ばれたような良い論文が書けたのは、細かい仕事で分断されることなく快適なコンディションで研究ができる未来ICT研究センターの環境のおかげだそうです。

Profile

栗原一嘉栗原一嘉(くりはら かずよし)
神戸研究所未来ICT研究センター ナノICTグループ 専攻研究員
東京大学大学院博士課程修了後、神奈川科学技術アカデミー研究員などを経て、2004年情報通信研究機構に入所。半導体励起子レーザー分光、近接場光学顕微鏡、表面プラズモン共鳴センサーなどに関する研究に従事。博士(理学)。



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