「エモ語」で心をつなぐ高齢者向けコミュニケーションロボット「BOCCO emo」の開発秘話と未来への展望(4/4)

4.未来の生活に寄り添う「BOCCO emo」── 高齢者が生き生き過ごせる社会を目指して

今後の「BOCCO emo」のアップデートや展望について教えてください。

多賀谷:「BOCCO emo」を単なる高齢者向け製品に特化させたいわけではありません。高齢者の方々も、心の中ではいつまでも若々しくありたいと思っているはずです。その意志を私たちも尊重すべきだと考えています。

また、人間らしい温かいコミュニケーションを通じて、高齢者の孤独感を解消していきたいと思っています。生活の質を向上させ、家族の一員としてロボットがいるような未来を見据えています。カメラで人同士をつなぐのではなく、感情的なつながりを重視し、人と人との関係を円滑にする媒体でありたいと考えています。

鷺坂:リスキリングのような観点になりますが、高齢者の方が過去に詳しかったことを思い出しながら、学べるような体験を提供できたらよいのではとも考えています。現役を引退し、役割が少なくなる中で、高齢者の方々の日常が単調になってしまうのは寂しいことです。高齢者の方々に、良い刺激や生きがいのある生活を提供できる存在としてロボットを活用することができれば、家族とのつながりも含めて、より生き生きとした人生になるのではと思います。

多賀谷:寄り添う存在であることが何より大切です。世の中は本音と建前で分断されていることも多く、私たちはその溝をつなぐ存在でありたいと考えています。ロボットは品行方正なものが多いですが、時には愉快な存在もあってよいと思います。そうした部分も当社のコンセプトに通じています。

孤独な方にとっては、日常で利用するレジ係の方とのやり取りが唯一の人との接点かもしれません。しかし、今の世の中ではそのレジさえも自動化が進んでいます。効率化や自動化は機械の本質ですが、それによって人間らしさや温かみが失われることもあります。このジレンマは、ロボット開発者として常に意識している課題でもあります。だからこそ、ロボット開発には面白さだけでなくやりがいもあります。高齢者が取り残されない温かみのある未来を、ロボットを通じて作り出していきたいと思っています。

 

取材協力:ユカイ工学株式会社

取材日:2025年8月